虹へ、アヴァンチュール |
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作家 | 鷹羽十九哉 |
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出版日 | 1983年06月 |
平均点 | 4.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 4点 | nukkam | |
(2023/10/24 08:29登録) (ネタバレなしです) ミステリー作家としては遅咲きの鷹羽十九哉(たかはとくや)(1928-2002)のデビュー作が1983年発表の本書で、ユーモア本格派推理小説にハードボイルド風味を加えたような作品です。死体を発見する羽目になった主人公はフリーのカメラマンですが、大きな料亭の一人息子で長唄、舞踏、囲碁、将棋、柔道、空手、マージャン、ビリヤードと多趣味を誇り、高級車に高級バイクを乗り回すという設定で(本書では囲碁とバイクの場面が目立ちます)、個人的にはひがんでしまいます(笑)。こういう設定なのでどこか他人を見下すようなところがあるのですが、そんな彼がとても敵わないと思わせる人物を登場させて後半は探偵コンビの捜査に進展します。最終章で11の証拠に基づく推理を披露して説明してはいますが、ほとんどが動機に絡むもので機会や手段や直接的な物証はほとんど触れられていません。人物整理も上手くなくて読みにくい作品です。 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | |
(2023/06/27 13:13登録) (ネタバレなし) 「おれ」こと29歳の独身フリーカメラマン、松平菊太郎は、愛用のバイクで九州を取材旅行中、岡村ミドリと名乗る22~23歳くらいの美人と知り合う。ミドリと一旦別れた菊太郎だが、やがて彼は、何者かに刺されたミドリに再会。しかも彼女は体に火までつけられていた。絶命するミドリから謎のダイイング・メッセージを受け取った菊太郎は、素人探偵として事件の真相を追うが。 1983年から2003年までサントリー、文藝春秋、朝日放送が主催した、新作ミステリ新人賞「サントリーミステリ大賞」の第一回・大賞受賞作。 新人賞だが、昭和3年生まれの作者はこの時点で55歳と、昭和の後半としてはやや年配。もともとは業界紙の記者だったというので文筆活動の経験はあったようだが、新聞記者出身にしては文体がかなり饒舌。 しかもいきなり場面と劇中の時勢が変わったり、前置きもなく新たな登場人物の名前が出てきたりとかなり読みにくい。 裾野が広がる話の流れは、やがて戦時中の秘話にまで及ぶが、正直、非常にシンドかった。例えるなら、田舎に行って、こちらが希望もしないのに、面識もない地元の爺様の私的な思い出話をいきなり延々と聞かされるかのごとし。 ただし後半4分の1辺りからは妙な熱量を感じさせる勢いは確かにあり、世代人らしい戦争観、独自のものの見方などにも興味を惹かれた。終盤の大きな逆転も、実は結構面白いことを仕込んでいたのがようやく最後の方でよくわかるが、それを活かす演出が伴っていない感がある。 力作だとは思うが、作者が書きたいことを詰め込み過ぎ、そしてその一方で、こなれの悪さで損をしてしまったような作品。途中の眠さは、久々に評点3~4点の作品かと思えたが、最後の方だけなら6点はあげたくなる。トータルとしての評点はまあこんなもの。 なお評者は、先日の出先の古書店の店頭の50円均一の中から、帯付きの文庫本の本書を発掘。大昔にSRの例会に出ていた頃、このタイトル見たことがあったなあ、程度の気分で購入して一読した。 その文庫版の解説は、サントリーミステリ大賞の受賞作は、主催者の一角である朝日放送の手でテレビドラマ化されるという事情があった縁で、朝日放送のプロデューサーの山内久司(世間には「必殺シリーズ」のプロデューサーとして有名)が書いており、その辺も当方には興味深かったが、山内氏は平然とその解説の中でメイントリックというか大ネタをバラしているので、もしこれから文庫版で読む人がいたら、注意のこと。 |