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ミステリの祭典

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哀惜
マシュー・ヴェンシリーズ

作家 アン・クリーヴス
出版日2023年03月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 HORNET
(2023/12/31 16:24登録)
 マシュー・ヴェン警部は、ジョナサンという男性と同性結婚している辣腕刑事。パートナーのジョナサンは、障害をもつ人たちの社会支援を趣旨とした施設を運営している。ある日、マシューの住む近所の海岸で男性の死体が発見された。事件として捜査を進めるうち、男性の人間関係はパートナー・ジョナサンが運営する施設へとつながっていく。自分は捜査を外れたほうがいいのか?―迷いながらも地道に捜査を進めるマシュー。果たして、事件の背後にあったものは?

 まさに地に足の着いた、地道な警察捜査の丁寧な描写による物語。奇を衒う変化球もない、正道の展開である。間違いのなさで安心して読み進められるが、展開的に派手さもなく、最終的な重要度に関わらず関係者の捜査が押しなべて丁寧に描かれるので、中盤やや退屈でもある。
 真相解決も非常にまっすぐな内容であり、いわゆる「読者を裏切る大どんでん返し」もないが、重厚な本格ミステリとして充実した一作ではあった。

No.1 5点 nukkam
(2023/06/02 08:42登録)
(ネタバレなしです) 1986年にミステリー作家デビューしたアン・クリーヴス(1954年生まれ)は新しいシリーズを次々に生み出す傾向があるようで、ジミー・ペレスシリーズの最終作「炎の爪痕」(2018年)に続いて2019年に発表した本書は新シリーズ(5番目)の第1作の本格派推理小説です。主人公のマシュー・ヴェン警部は同性結婚して母親とは対立関係、部下のジェン・ラファティー部長刑事はシングルマザー、ロス・メイ刑事は(本書では私生活は語られませんが)苦手な仕事に気の乗らない姿勢を隠せないなど個性的な面々が揃います。ハヤカワ文庫版で550ページを超す大作の上にとても地味な展開の作品ですが、登場人物リストに載っていない人物も多いので一気に読まないと誰が誰だかわかりにくいかと思います。新たな事件でちょっと盛り上がるところはあるものの足を使った地道な捜査が続き、鮮やかな推理説明で解決するわけではありません。人物描写がきめ細かい所はこの作者らしいと思いますが、もう少しインパクトのある何かが欲しかったです。

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