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ミステリの祭典

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華やかな殺意―西村京太郎自選集〈1〉

作家 西村京太郎
出版日2000年10月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2025/10/07 17:38登録)
西村京太郎である。しかしこの自選短編集は十津川警部とかよりずっと前。「天使の傷痕」より前にコンペ入賞した「病める心」「歪んだ朝」に、乱歩賞受賞直後の発表になった「美談崩れ」、それから長編では「名探偵なんか怖くない」の前に発表されていることになる「優しい脅迫者」「南神威島」の収録。だからホントに初期作だし、社会派隆盛期でもあり、「天使の傷痕」同様に社会派系の作品集である。

「病める心」「美談崩れ」と今でいう報道被害を扱っているあたり、今でも特に意義があるんじゃないかな。新聞記者の功名心が事件関係者の心を踏みにじって更なる悲劇を呼んでしまう、何ともやりきれない話。子供が絡んだシンプルな話だけにココロが痛い。まあブンヤなんてロクでもないというのは評者も先日実体験したよ。
刑事を主人公に据えた「歪んだ朝」は、山谷のドヤ住まいの父に育てられる、悲惨な境遇の少女が殺されたリアリティのある事件を扱って、丁寧な捜査による事件の二転三転を追った読み応えのある中編。少女はなぜ口紅を塗ったのか、その幼い心に秘められた謎がストーリーのコアとしてうまく機能している。本書中のベスト。

で「優しい脅迫者」はクイーン編の「日本傑作推理12選」で海外に紹介されたことでも有名だし、2回のテレビドラマ化がされている。1978年の「土曜ワイド劇場」を評者観た記憶しっかりあるよ。ひき逃げをした理髪店主のもとに、定期的に訪れてはヒゲを当たらせて、その秘密で店主から金を巻き上げる恐喝者の話。今回この本を取り上げたのは、このドラマが強く記憶に残ってるからだ。店主は神経質そうな田村亮、「優しい脅迫者」は坂上二郎。まあだからコント55号解散後の坂上二郎のキャラクター性がとってもハマっていたドラマだった。ネットで検索してみると「トラウマになった」なんて声が今でもあるな。監督は「拳銃は俺のパスポート」で日活ハードボイルドの名作を撮ったこともある野村孝。とても懐かしい。

最後は「南神威島」。南国の島に追われるように赴任した若い医師。到着直後に島を伝染病が襲った。医師は自身が感染源であるということを隠して、血清の到着を待った...伝染病の責任は、島の信仰によってどう裁かれるか?
まあこんな話。大体お約束の範囲。ホラーみたいな感覚なのかな。

というわけで、「歪んだ朝」「優しい脅迫者」の2本がナイス。

No.1 6点 蟷螂の斧
(2023/05/20 11:20登録)
①病める心 5点 少年(7歳)が自殺。違和感を覚えた記者はその母親を訪ねる・・・事実という幻想
②歪んだ朝 5点 戦後間もない山谷。少女の絞殺死体が発見された。少女は口紅をぬっていた・・・ドヤ街からの夢
③美談崩れ 6点 小学生が交通事故死。それを助けようとした婦人も怪我をして入院・・・過去の交通事故
④優しい脅迫者 8点 日本傑作推理12選(Ⅰ)エラリー・クイーン編所収 見知らぬ男が床屋に現れた。主人が交通事故を起こしたことを種に強請り始めた・・・保険金
⑤南神威島 7点 マイ・ベスト・ミステリーⅣ 日本推理作家協会編で書評済 無医島に青年医師が着任。5人が伝染病に。しかし血清は4人分しかない・・・神のお告げ

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