まず牛を球とします。 |
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作家 | 柞刈湯葉 |
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出版日 | 2022年07月 |
平均点 | 7.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | びーじぇー | |
(2024/11/22 21:35登録) 表題作は、有名な物理ジョークを元ネタにした遺伝子改変もの。命を奪わず肉を食べたい、という人の根本的な傲慢さをシニカルに描いている。特に培養肉を命の定義から外すためのロジックが秀逸。中盤以降に明かされる深刻な状況と、それを日常の延長として受け入れる主人公の他人事な空気が、生命の設計図であること以外の遺伝子の意味を考えさせる。 「ルナティック・オン・ザ・ヒル」は地球と戦う月軍兵士を描いている。未来の月ならではの空気も泥臭さもない戦場が、モノローグの抑えたトーンとマッチしている。地球の映像作品を見て育ったために、空気抵抗のない戦場に作り物感を覚えるなど、月で生まれ育った人々の世界観が絶妙。 「改暦」は宋の天文学者が、元の皇帝の下で日蝕を予言する話。日蝕の予言が天子の権威を表す重要な指標であった時代。統治者の変化によって重用されるようになった天文学者の後ろ暗い喜びの描写がうまい。学者にとって時代に自我に等しい重みも持ち得る自説との付き合い法についても、カリカチュアされすぎずに描かれている。 「沈黙のリトルボーイ」はリトルボーイが起爆しなかった広島で、米国の原子物理学者と爆発物処理屋が不発原発解体ミッションに挑む話。歴史改変のエッセンスが鮮やか。 共通のテーマを別アプローチで描く作品が複数あり、短編集ならではの比較が楽しめる。 |
No.1 | 8点 | 虫暮部 | |
(2023/05/19 13:13登録) ぶっとんだアイデアをシレッと描く理系(風)作家? いまのところ、この平熱の文体が(レトリックの下手な文章家の逃げではなく)作風に必要な一部として成立している。森博嗣の非ミステリ系コメディにSF色を追加した感じ。 「犯罪者には田中が多い」は、キャラクター小説化が著しい昨今のミステリに対する批評? 「家に帰ると妻が必ず人間のふりをしています。」、微笑ましい “恩返し” だろうと思っていたら、ただ一点に釘を打つだけで彩色不明なホラーに変換! 「大正電気女学生」、流行りのパターンは面白いから流行りになるんだよな。と開き直って “このノリ、好きだ” と言おう。 |