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ミステリの祭典

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刑事弁護人

作家 薬丸岳
出版日2022年03月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 パメル
(2024/09/09 19:40登録)
タイトル通り刑事事件の被疑者の弁護を請け負う弁護人にスポットを当てた作品で、凶悪犯に対する必要性をテーマにした法廷ミステリ。
既婚者の女性警察官・垂水涼香がホストクラブに通い、挙句そのホストを殺してしまったこの事件に世間の注目が集まる中、涼香の弁護を担当することになるのが持月凛子だ。これまで殺人事件の刑事弁護の経験はなく、所長の細川に助力を仰ぐが、いくつもの刑事事件の弁護団に加わっている多忙な細川にその余裕はない。そこで推薦されたのが西大輔。刑事事件関連の経験が豊富だというが、弁護士としての評判は正直芳しくなく、特に反省の色が見えない被疑者や被告人を嫌ったその弁護姿勢を凛子も問題視していた。
こうした反りの合わない二人が涼香の弁護人となって事件の概要を洗い直していくのだが、涼香は何か隠しているようで釈然としないことばかり。被疑者を擁護して少しでも量刑を軽くしようとする弁護人という存在を、否定的に捉える向きも少なからずあるだろう。本作は極めて複雑な背景を持った殺人事件を丹念に解きほぐしながら、被疑者の声に耳を傾けることの意義と、犯罪によって大きな喪失を経験してもなお、それが出来るのかを問う物語だ。
過去の事件の使い方が巧みで、さらに凛子や西の過去や人間関係も読みどころとなっている。もう一つのテーマとなるのが、犯罪被害者の癒えない傷。残された人をどうケアするべきかと考えさせられる。凛子と西は真実に辿り着き、涼香の殺人容疑を覆すことが出来るのかの臨場感に満ちたクライマックスの裁判シーンは読み応えがあった。

No.1 7点 take5
(2023/05/14 14:49登録)
社会派として薬丸岳が好きです。
被告のワイダニットで押す作品。
弁護士として信念も背景もある
二人の主人公が魅力的で、
ハードカバー500ページ越でも
ぐんぐん読めました。
扱う話題が小児への加害と
重いものがありますが、
登場人物の葛藤が丁寧に描かれています。
最後の加納母に対する二人の有り様は、
やりすぎとテーマのギリギリの所で
評価の分かれる所かもしれません。

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