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ミステリの祭典

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キン肉マン 四次元殺法殺人事件
ゆでたまご監修

作家 おぎぬまX
出版日2023年03月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2023/10/12 05:25登録)
(ネタバレなし)
 まったくの私事になるが、声優・神谷明が各テレビアニメシリーズ版での主役を演じた80年代の「週刊少年ジャンプ」三部作の中では、この『キン肉マン』のみ、まったく無縁だった。
 当時は、ギャグッ気のあるヒーローものというのはまだ許容範囲だったが、とにかく下ネタオチが随所に出て来る印象で、そこがイヤだったのである。
 で、最初の方でつまずいてしまったので、コミックもアニメもまったく接点がないが、当時の特撮アニメ同人界で私淑していた少し年長の方がこの作品を大好きで、その人が評価するなら、実際に本編をしっかり楽しめばそれだけの魅力があるんだろうなとも観測したが、一方でそんな経緯から作品を好きになるというのも、なんか不純だなという思いもあったので、とうとうその後は、ほとんどまったく「キン肉マン」ワールドとは縁がない。

 とはいえ、とにもかくにも長年アニメファンやっていれば、これだけの世代を超えた人気コンテンツ、どうしたって耳情報も入ってくるので、本当にわずかばかりは作品の世界観やキャラクター設定にもいつの間にか知見めいたものも築き上げられて? いた。いや、本物のファンからすればもちろん、きっとお笑い種の門前の小僧だろうが。

 というわけで原作もアニメも本編をまともに楽しんだこともないまま、本書を手に取ったが、本サイトでの先のメルカトルさんのレビュー通り、一見の読者や門外漢にも、最低限以上の世界観やSF設定、キャラクター設定は理解できるように配慮がしてあるので、読む上でまったく問題はない。スラスラ読める。
 とはいえ作中の登場人物同士の話題が本編での懐旧譚に流れ込んだりするあたりは、やはりファンの人の方が楽しめるだろうな、という印象だが。

 ミステリとしては愉快なバカミス・特殊設定パズラーの連作で、自分のような立場の者にもじゅうぶん楽しく読めた。
 ついでに今まで知らなかった「キン肉マン」ワールドの情報も教えてもらえたので、ホウホウ……的に面白かった。なんか遠い昔の少年時代に友人の家に遊びに行って、タイトルだけは聞き及んでいたがまだ読んだことなかった人気マンガを貸してもらって楽しんだ、あの日のような気分である。

 しかし当初は、いくら原作者監修の作品で企画とはいえ、原典で活躍するレギュラー超人たちを二次創作でホイホイと殺害してしまっていいのか? と案じたが、ああ……この作品世界には<そういう設定>があるのね、と安堵した。なるほど、これは意外に、謎解きミステリの二次創作に向いた世界かもしれん(笑)。

 いろんな意味で、期待以上に面白かった。
 ガチの『キン肉マン』ファンが読むと、どう感じるかはわからないけれど。

No.1 6点 メルカトル
(2023/04/29 22:57登録)
『キン肉マン』がミステリ小説になって登場
キン肉マンが失踪した! 重臣・ミートはキン肉マンへのリベンジに燃えるキン骨マンを相棒に捜索へ繰り出す。
しかし、二人は行く先々で超人による殺人事件――すなわち“超人殺人”――に遭遇するのであった!
変形、分身できるのは当たり前で、身体が機械の者、顔面がブラックホールに繋がっている者、時間を止めることができる者、体に付いたトイレに全てを流し込める者……!
様々な異能力を持つ容疑者たちに、物理法則を無視したトリック……!
犯人は誰だ!? そして、キン肉マンはどこだ!?
Amazon内容紹介より。

子供騙しと侮る事なかれ。探偵役はキン肉マンの重臣アレキサンドリア・ミート君。そしておまけでキン骨マンが活躍する超人殺人事件に迫る連作短編集。
本格ミステリとしてはツッコミどころ満載ではありますが、キン肉マンファンにとっては大満足の出来だと思います。登場する超人は有名どころでバッファローマン、ウォーズマン、ペンタゴン、ブラックホール辺り。他にバイクマン、タイルマン、ベンキマン、カナディアンマン、スペシャルマン等。トリックは各超人の特徴を生かしたものばかりで、通常のミステリとは一味違います。原作を読んでいない人には何のことか理解できないケースもあるかも知れません。しかし一応この超人にはこんな能力があるという最低限の説明がなされている為、混乱する事態にはならないでしょう。

まあ数え上げればキリがない程細かい瑕疵はありますが、そこに目を瞑れば本格ミステリとしても十分楽しめます。意外性もありますし、少ない登場人物で完結させている手腕もお見事。決してお薦めはしませんが、暇な方は読んでみるのも一興かと。でも責任は負いかねますのであしからず。

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