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ミステリの祭典

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イリヤの空、UFOの夏 その1

作家 秋山瑞人
出版日2001年10月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 糸色女少
(2023/07/23 23:11登録)
ボーイ・ミーツ・ガール、不思議な美少女、不安を抱えつつ繰り返される日常。漫画や小説で、今まで何度となく目にしたことのある設定ではあるが、作者は圧倒的なキャラクター造型と描写力で、この古い設定を新鮮で瑞々しい物語へと仕立て直した。
懐かしく笑えて、そして哀切で痛々しい。二度とは戻らない夏の物語である。

No.1 6点 メルカトル
(2023/04/22 22:59登録)
「6月24日は全世界的にUFOの日」新聞部部長・水前寺邦博の発言から浅羽直之の「UFOの夏」は始まった。当然のように夏休みはUFOが出るという裏山での張り込みに消費され、その最後の夜、浅羽はせめてもの想い出に学校のプールに忍び込んだ。驚いたことにプールには先客がいて、手首に金属の球体を埋め込んだその少女は「伊里野可奈」と名乗った…。おかしくて切なくて、どこか懐かしい…。ちょっと“変”な現代を舞台に、鬼才・秋山瑞人が描くボーイ・ミーツ・ガールストーリー、登場。
『BOOK』データベースより。

冒頭、主人公の中学二年生浅羽直之とヒロイン伊里野可奈との出会いは非常に幻想的で、初っ端から心を持って行かれます。シリーズ一作目という事で、これは主な登場人物紹介を兼ねた序章という立ち位置と考えて良さそうです。それぞれが個性的でキャラ立ちは万全と考えて間違いないでしょう。これだけ描き分けられる作者の実力は本物で、Amazonでも大変高い評価を得ています。ただ、本作を読んだだけでは、ここから一体何が始まるのか、物語がどう転ぶのか全く読めません。どう考えても次巻へと読者の思考を誘う様に仕向けられているとしか思えませんね。

浅羽はまあどこにでも居そうな役どころではありますが、長身で女にモテるけれど思考回路が常人と違う園原電波新聞部部長の水前寺邦博に引っ張り回されて悪戦苦闘するし、同じ部の特派員(部員)の晶葉は常に強気だが密かに浅羽に恋している様だし、浅羽の妹の夕子はブラコンだし、保健の先生の椎名真由美は曰くありげで怪しい存在だし、ヒロイン伊里野可奈は異星人との関連が見え隠れしているし、伊里野を付け狙う存在も気になるところだし、色々人間関係がややこしいことになっています。これらのキャラの挙動だけで十分面白く、今後の展開に期待していずれ第二弾も読んでみたい気持ちになりました。

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