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ミステリの祭典

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三体0 球状閃電

作家 劉慈欣
出版日2022年12月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 糸色女少
(2023/11/17 22:24登録)
「三体」と緩やかにつながった前日譚。
主人公の陳は少年時代に「球電」を目撃した。壁を通り抜けたそれは陳の両親を一瞬で灰にして消えた。陳は球電研究に人生を捧げることになるが、研究は純粋に学問的に進められるものではない。
膨大な費用を必要とする研究は軍事応用とつながり、国際的な競争も激化する。国防大学新概念兵器開発センターの女性将校・林雲は、有能で利口な知性派だが、兵器開発に取りつかれており、陳とは別の意味で球電研究に執着していた。
球電は帯電し発光する球体が大気中を浮遊する物理現象で、実際に被害例も報告されているが、その発生機序は解明されていない。作中でも解明は困難を極め、人為再現実験はうまくいかない。まれに発生させられても制御できず危険だ。陳は、球電はただの電磁的現象でなく、道の空間構造を秘めているのではないかという大胆な仮説を立てる。やがて研究チームに世界的な理論物理学者の丁儀が参加したことから、研究は新たな局面を迎える。
奇抜なアイデアやガジェットが次々繰り出され、キャラの立った登場人物たちが活躍する第一級のエンタメであると同時に、宇宙論や量子力学の知見を踏まえた本格SFだ。

No.1 7点 虫暮部
(2023/04/07 14:29登録)
 読むと世界の見え方が変わってしまう与太話。
 この人の作風には、ぶっきらぼうな書き方故に却って感傷を読者が勝手に奥から引っ張り出してしまう、みたいなところがある。その点ではやっぱり、本当は過剰なエモーションを持つのにそれに陶器で蓋をして固めたような林雲のキャラクターからは目が離せない。ロマンスにならないところがまた良し。
 これが(登場人物はともかくストーリー的に)どうして『三体0』なの? とずっと思っていたが、最後につながって納得。成程ね!

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