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ミステリの祭典

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やっと訪れた春に

作家 青山文平
出版日2022年07月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点 ALFA
(2023/11/23 11:20登録)
端正な文体で綴られた長編時代物ミステリ。
情景描写、人物の造形、過去の因縁話、いずれも申し分ない。
冒頭、主人公が濠に落ちる話はミステリ的興趣があって面白い。

(少しネタバレ)
一方本筋の謎は、残念ながら犯人推定のプロセスが物足りない。なぜ暗殺者は鉢花衆でなければならぬのか。鉢花衆の残るひとりがなぜあの人物と推定できるのか。
クローズドサークルならともかく、町あるいは藩というオープンな設定においてはこのロジックではいかにも弱い。
さらにはいくら主君の命とはいえ、三代にわたってあの強烈な「斬気」を保ち続けられるのか。などミステリの根幹部分で腑に落ちないところがある。

とはいえ、上質な時代物としては十分楽しめた。

No.1 8点 人並由真
(2023/02/13 05:34登録)
(ネタバレなし)
 19世紀の初め。橋倉藩は、本家の岩杉家と分家の田島岩杉家から交代で、代々の藩主を出してきた。それは分家出身の第四代目藩主、岩杉能登守重明による、英雄的な藩政改革の史実に始まる藩の伝統だった。だが現十一代当主で本家筋の昌綱、その後任藩主を田島岩杉家が辞退した。現在まで橋倉藩の近習目付(主君サイドからの目付役)は、藩がそのように藩主継承上での二系列体勢だったため、本家筋の長沢圭史と、分家筋の団藤匠が担当してきた。圭史と匠は盟友でともに67歳。藩主継承が一本化され、今後の藩の情勢もより良い方向に向かうだろうと期待を込めるが、そんななか、藩の要職にある人物が暗殺される。

 Twitterとかで評判がいいので、ほほう? と思って読んでみたが、時代小説、フーダニット&ホワイダニットのパズラー、ハードボイルドミステリ、全部の面で良質な優秀作。
 昨年2022年の国産ミステリの層の厚さというか、結構な豊作ぶりを、さらにまたこの一冊で、実感させられた。

 評者は青山作品はまだ『遠縁の女』しか読んでないので、まさかこのヒトはこんなレベルのものを当たり前に書いてるのか!? といささかぶっとんだが、Amazonのレビューとかを覗くと、さすがにこれは著作の中でも、出来のいい方らしい。そうだろう、そうだろう。
 
 正直、時代小説はやや苦手な方な評者だが、時代設定の中での必要な情報や知識は、送り手の方で饒舌にならない範囲で逐次、ちゃんと丁寧に説明してくれるので、スラスラ読める。なるほど、人気作家な訳だと改めて実感。
 優秀作~傑作。

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