home

ミステリの祭典

login
ブラックランド、ホワイトランド
フォーチュン氏

作家 H・C・ベイリー
出版日不明
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2023/02/11 07:17登録)
(ネタバレなし)
 1930年代の英国。医学者でアマチュア名探偵のレジナルド(レジー)・フォーチュンはダーシャー州の友人で、アマチュア考古学者のデュドン将軍の屋敷を訪ねる。現地は肥沃な黒土と痩せた白い土地に二分される田舎で、かつて地球の太古に巨人族がいたという説を信奉する将軍は、近所の地層からその証拠となるという化石を発掘していた。だが医学者のフォーチュンは、そこにあるのが、およそ十年ほど前に死亡した、おそらく十代の男子の骨らしいと気がついた。

 1937年の英国作品。
 フォーチュン氏の長編、ようやっとの邦訳でバンザイである。
 で、私事ながら、この二週間、クソ忙しくてほとんど何もミステリが読めなかったが、ようやく余裕ができたので、とびついてページをめくる。
 会話の多い文章、そこまでサービスせんでも……と言いたくなるくらいに細かい、実に読みやすい章立て、矢継ぎ早にしかもかなりサプライズ感も豊かに続発する事件……と、リーダビリティは最強。
(名探偵のクライシス描写も、結構とんでもないネタで、ハラハラしつつ笑える。)

 いやー期待通りに、いや、ソレ以上にオモシロいね! とウハウハであったが、ラストというか終盤の解決、事件の決着部分でいささかズッコケた。
 大山鳴動して鼠一匹とはこーゆーのを言うんだろうな、という印象で、しかも伏線などもあまり万全とは言えない。いい話っぽくまとめてある、小説的な仕上げはまあ悪くないが、5分の4までが頗る楽しめただけに、このクライマックスはガッカリ。

 でもまあ、読んでるうちの大部分は楽しかったので、オマケしてこの評点で。
 もう一、二冊くらい、本シリーズの長編作品は読んでみたいので、続けて発掘紹介は、ぜひよろしく。

(ところで、なんでAmazonのデータ登録が不順になるんだろ、これ? :2023年2月11日現在。)

No.1 5点 nukkam
(2023/01/27 23:30登録)
(ネタバレなしです) 1937年発表のレジナルド(レジー)・フォーチュンシリーズ第2長編です。巨人の骨を見つけたという友人に招かれたレジーが骨を調べると少年の骨が混じっていた事件に端を発します。警察との謎解き議論が何度もありますが、意見を求められるとはぐらかしたり警察の無能ぶりをほのめかしたりするレジーに警察の苛立ちは募る一方です。もっとも警察側にも問題点は多々ありですけど。アントニイ・バークリーの皮肉屋の探偵ロジャー・シェリンガムだってもう少し警察と友好的な関係だったように思います。様々な伏線が用意されながら真相説明では十分に活用できず後出しに感じられるのが残念ですが、当時の本格派推理小説では事件解決後に若い男女が結婚してハッピーエンドのパターンが多いのに本書では中盤に結婚シーンが挿入されるなどユニークなプロット展開です。肥沃な黒い土地と不毛な白い土地が生み出す経済格差という舞台背景描写も当時としてはモダンだと思います。暗めの文章で描写も地味ですが、過度に重くならず読みやすいのは作者のセンスでしょう。

2レコード表示中です 書評