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ミステリの祭典

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一千億のif

作家 斉藤詠一
出版日2022年09月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 文生
(2022/11/24 13:29登録)
歴史のifを研究する架空歴史学という学問には心躍るものがあります。しかし、ifの可能性をいかにして検証していくのか?といった方法論に目新しさが全くない点については物足りなさを覚えました。作中で現実には存在しない学問をでっちあげるのなら、そういった部分をもっと掘り下げてもらいたかったところ。
また、本筋である陰謀を巡っての攻防も、肝心の陰謀に説得力がないために今一つ盛り上がりません。少なくとも、個人的にはあの程度の計画で世界が牛耳れるとは思えませんでした。
その代わり、キャラは立っており、ライトなタッチで手軽に楽しむことができるのは美点かも。

No.1 6点 人並由真
(2022/11/23 07:25登録)
(ネタバレなし)
 南武大学人文学部の三年・坂堂雄基は就活を控えて、企業とのコネがあると喧伝した准教授・有賀幸一郎のもとに足を運ぶ。歴史上のありえたかもしれないifの分岐について研究する有賀の研究室「有賀研」は、修士(大学院生)一年の女子・冬木小春のみが所属する弱小組織で、雄基は半ば強引にメンバーに加えられた。そんな雄基だが、実は彼の実家の坂堂家には、大きな、そして意外ないくつもの歴史上の秘密が伏在していた。

 タイトルと帯に書かれたあらすじから、文春文庫の某・海外長編作品のような、歴史の記録の向こうに現実の世界とはまた違うパラレルワールドの存在が透けて来るSFミステリだろうと予期していたら、まったく違った(笑)。
 スーパーナチュラルなことは基本的にほとんど起こらない、一応はリアルっぽい作品世界を舞台にした、広義の歴史探求ミステリ。

 全4話(第一話のみ雑誌に掲載され、あとは書き下ろし)の連作短編っぽい構造だが、軸となる大きな謎はなかなか全貌を見せず、最後のエピソードでようやく明らかになる作りでもあり、やはりどちらかといえば長編に近い。

 有名な、明治時代の(中略)消失の謎、さらには(中略)の行方を追う物語の主題など、なんやまったく某・先輩の乱歩賞作家の著作の世界やんけ、と思わされたが、さすがに少しはアレンジがされている。
 
 しかし全体的になんというか、悪い意味でのジュブナイル作品か、あるいは赤川次郎のライトミステリを読んでるような印象の、あまりよろしくない軽さが全編につきまとっている感じであった。
 こーゆーものはキライでなく、むしろ好きな方なんだけど、なんか送り手がツーランクわざと落としてまとめてみた、ヤングアダルト作品のような印象が免れない。

 読後にネットで先に読んだヒト様のお声をうかがうと、古き良き冒険小説といった主旨でホメている方もいたが、評者とは「古めかしい」という部分の認識だけは共通する(汗)。
 悪口じゃなく、おっさんではなく、十代~二十代前半のあんまり小説をよまない読者向けの作品だったかもしれん。
 
 ただまあ、青春ミステリとして考えるなら、主役トリオのキャラクターはけっこうスキ。シリーズ化されるなら、それはそれで歓迎ではあるが、作者がそればっか書くようになったら困るしイヤだなあ、ともちょっぴり考えたりしている。

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