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ミステリの祭典

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拝啓 交換殺人の候

作家 天祢涼
出版日2022年07月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 HORNET
(2023/05/21 19:43登録)
 上司・牧村司のパワハラによって職を辞した秋元秀文は、退職から半年が過ぎても社会復帰できずにいることに絶望を感じ、自殺を決意した。ところが首を吊るために登った木の洞に、白い封筒を発見する、手紙には〈どうせ死ぬなら殺してみませんか?〉と、交換殺人をもちかける内容が。その日から、白い封筒の送り主との「文通」が始まる―

 そのまま交換殺人の決行に話が進めば、まぁそういう本格ミステリになるのだが、当然そうはいかない。交換殺人の絶対条件である「お互いのことを詳しく知らない」という禁忌をあっさりやぶり、物語は予想外の展開へ。主人公・秀文と、文通(?)相手の詩音のやりとりはなかなか興味深く、ミステリたる仕掛けも施されていて、ある意味ほっこり楽しめた。
 けど、そういう方向ならそれで、きっちりラストを描き切ってほしかったなぁ。

No.1 6点 人並由真
(2022/11/21 08:00登録)
(ネタバレなし)
 職場のパワハラに心をすり減らし、退職した25歳の独身青年・秋本秀文。彼は無為に過ぎていく日々の中で絶望を感じ、神社の桜の木で首を吊ろうと考えた。そんな秀文が木の枝の周辺で見つけたもの。それはその木の枝で自殺を図ろうとする者の出現を見越して書かれていた「交換殺人」の提案書だった。秀文は、その書面の書き手と思える女子の存在を認め、とにもかくにも年若い娘に殺人をさせたくないと文書での交信を始めるが。

 1950~60年代の当時の新時代の海外ミステリにありそうな? 設定で開幕。なかなか洒落た序盤だと思いながら読み進めると、相手向けの書面を交わす二人の主人公の間になんとも奇妙な絆らしきものが築かれていく?
 もしやこれは新本格版『愛の手紙』(フィニイ)か⁉ とワクワクドキドキしながらページをめくると、段々と作者が仕掛けた物語の流れが見えてくる。

 で、まあ、トリッキィなのはいいんだけど、正直、ひとことで言えば世界が狭すぎるよね? これ。
 終盤のサプライズには確かに驚かされたが、数秒後に冷静に考えてみると、主人公と(中略)が(以下略)。

 人工的に組み上げたお話世界の居心地の良さはそれなりに認めるものの、今回はけっこう大きな部分で、無理筋を感じて仕方がない。
 まあ、そういう(中略)もあった世界での物語として納得、了承するしかないのではあるが。
 気恥ずかしさを意識して照れないようにまとめたクロージングそのものは悪くはないが、切れ味はあまりよくない。
 作者としては下位の方の作品で、佳作の中というところか。

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