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ミステリの祭典

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紙の梟 ハーシュソサエティ

作家 貫井徳郎
出版日2022年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 文生
(2022/09/17 10:53登録)
日本の裁判では1人殺しただけではまず死刑になることはなく、2人でボーダーライン、3人殺せば概ね死刑判決が下されるというのがだいたいの目安です。本作は、そうした現状が改められて一人でも殺せば即死刑となった社会を描いた一種のシュミレーション小説だといえます。
以下各話の感想

「見ざる、書かざる、言わざる」
殺せば即死刑になったことで起きた残忍な犯行。家のセキュリティを強固なものにしたら空き巣が減った代わりに強盗が増えたといった類の話でまずは皮肉効かせた軽いジャブといった感じ


「籠の中の鳥たち」
クローズドサークルミステリーに死刑問題を絡めた点がユニーク。犯人の狂った動機が意表を突くホワイダニットものの傑作です。ただし、人を殺せば正当防衛でも死刑という設定はかなり無理があるように思う


「レミングの群れ」
最近話題になっているいわゆる無敵の人を死刑問題と絡めた点が秀逸。読み応えという点ではこの作品が一番

「猫は忘れない」
証拠不十分で逮捕を免れた男を法に代わって成敗する話ですが、これは最初からオチがみえみえでイマイチだった。


「紙の梟」
本作品集の核となる作品ではあるものの、恋人を殺された主人公が死刑の是非について延々と悩む話でミステリ的な面白さはほぼなし
主人公が出した結論も特に新味はなく面白身に欠ける。

まずまず面白かったのだけれど、最後の2篇がイマイチだったのが残念。

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