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ミステリの祭典

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幸せな家族 そしてその頃はやった唄

作家 鈴木悦夫
出版日1989年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2022/06/16 06:15登録)
(ネタバレなし)
 有名な写真家・中道勇一郎の次男で小学校上級生の「ぼく」こと中道省一は、このおよそ一年の日々を振り返る。最初に家族の一人が死んで以来、中道家の周囲の一人を加えて、中道家の面々が次々に死んでいった日々のことを。

 先日、Twitterで、ミステリファンの選定によるオールタイムジュブナイルミステリベスト投票というのがあったようで、結果が出たのちに、そんな企画があったことを後から知った(不覚……だな?)。
 それで上位に入った作品を順々に眺めていたら、11位にランクインされていたのが本作。しかも投票コメントを読むと、かなり気になる種類の推しの文句が並んでいる。
 評者はまったく未知の作品で作者だったが、興味が湧いて、地元の図書館のお世話になって読んでみた。

 最初の事件が密室で開幕。続く事件でも証言の食い違いをロジカルに整理した推理など、ミステリファンの関心をそそる要素はてんこ盛り。 

 一方で主要登場人物が続々と退場していくタイプの作品なので、犯人そのものは直感も動員して見当はつきやすいかもしれないが、本作の魅力(それこそ今回のジュブナイルミステリ上位に入った)はそういうフーダニットの意外性よりも、かなり手数の多い(中略)なヒネリの数々にある。

 一応は小学生高学年でも読めるように書かれた作品のようだが、正直、作品の精神性というかスピリット的には、こんないびつななもの、児童に読ませてええんかいな、という感じ(悪口ではない、むしろホメ言葉)。
 もう30年以上も前に書かれたジュブナイルミステリだけれど、少年少女時代に読んで、大人になってからもずっと偏愛している人も多いらしい作品というのは、確かによくわかる。

 評者などは20世紀終盤からのジュブナイルミステリの系譜などはよく知らないのだけれど、こういうものをちゃんとチェックして評価している成人のミステリマニアという人種に、改めて敬服したくなったりする。

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