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ミステリの祭典

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化物園

作家 恒川光太郎
出版日2022年05月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2022/09/28 18:34登録)
この世界には何やら得体のしれぬモノがいて、それに出会ってしまった人間たちの物語ではある。とはいえ、そのことがいわゆる共通した世界観としてあからさまに全作を貫いているのかと問われれば、どこか違和感がある。例えば前半の三篇は、私たちの暮らす「今」を舞台としたホラー作品としてとりあえずは読める。なにせ、空き巣に目覚めた女やひきこもりの男、新興住宅地の「異人」の物語が続くのだ。だが、残酷酷薄な描写にコミカルな味を漂わせたりと、いささかオフビートに「読み」をさらりとかわす。そうした「読み」の違和感をてこに、続く四編で、ここではないどこかへと見事に蹴り飛ばして見せる。戦後だろうか、ある屋敷のお手伝いとして雇われた女の物語があれば、幕末のある村に端を発する物語、あるいはいにしえのアジアを舞台とする物語があり、ちょっとSF的なファンタジックな物語もある。あれよあれよと迷宮じみた異界の夢幻へと連れ去って、そしてそこにはえもいわれぬ通奏低音として「ケショウ」という怪異の存在がある。

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