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ミステリの祭典

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ウィンストン・フラッグの幽霊
エドワード・トリローニー&キャサリン・パイパー

作家 アメリア・レイノルズ・ロング
出版日2022年06月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2022/08/12 05:23登録)
(ネタバレなし)
「わたし」こと女流ミステリ作家のキャサリン・パイパー(愛称「ピーター」)は、文筆家&読書家仲間の集団「羽根ペン倶楽部」の仲間とともに、やはり同サークルのメンバーであるブレーク夫妻が住む屋敷に向かう。そこは近所に墓地があり、いわくつきの「幽霊の館」と呼ばれていた。そこに着いたピーターは、先だってそこで起きたという殺人事件の情報を聞かされた。そして屋敷の周囲には幽霊の姿が、そしてまた新たな死体が!?

 1941年のアメリカ作品。
 トリローニー&ピーターシリーズの第二弾。一流半の軽パズラーとしては非常に楽しめる出来で、かつての館の持ち主だった富豪ウィンストン・フラッグの遺言、さらにはその周辺の人間関係はちょっとだけややこしいが、人名メモなどを作りながら読めばそれほどタイヘンではない。
 中盤、結構ギョッとするサプライズがあり、そこから波状攻撃風に驚きの展開が続いていく。
 衆人が集う場での不可能殺人はかなり遅めだし、そんなにうまくいくのかなとも思うが、その辺のB級感も楽しいと言えば楽しい。
 
 巻末の解説によるとまだまだこういった雰囲気のB級、または一流半パズラー路線の未訳作品がこの作者には山ほどあるみたいなので、どんどん出してほしい。ピーター単独のシリーズのみならず、トリローニー単独の路線なんかもあるんだね?
 いい意味で、読み物パズラーらしいいかがわしさは満載で、とてもゆかしい作品であった。

No.1 6点 nukkam
(2022/07/05 01:02登録)
(ネタバレなしです) 1941年発表の本格派推理小説です。犯罪心理学者トリローニーとミステリ作家キャサリン・パイパーのコンビ登場作としては「<羽根ペン>倶楽部の奇妙な事件」(1940年)に次ぐ作品で、前作の登場人物の何人かが再登場しています。論創社版の巻末解説で説明されているようにメインの事件が起きるのはかなり遅いのですが、遺言状を巡る謎(ちょっと複雑すぎかも)や死体の素性を巡る3人の異なる証言などで中盤までの展開も読者が退屈しないように工夫しています。そしてメインの事件は誰も手を触れていないはずの銃から弾丸が発射されての射殺という、同年に発表されたジョン・ディクスン・カーの「震えない男」(別題「幽霊屋敷」)を連想させる不可能犯罪です(トリックの独創性ではカーが上回ります。もっともカーのトリックが素晴らしいかというとかなり微妙な気がしますが)。十分に楽しめた作品でしたが、巻末解説でこの作者を連続殺人の波状攻撃(四重殺人に五重殺人、何と七重殺人の作品まであるようです)とカー風の怪奇演出を得意とするように紹介しており、(本書はその特徴が弱いので)微妙に欲求不満になってしまいました(笑)。

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