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ミステリの祭典

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TOKYO REDUX 下山迷宮
TOKYO三部作

作家 デイヴィッド・ピース
出版日2021年08月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 7点 猫サーカス
(2024/02/27 19:17登録)
上層部の命を受けたGHQの捜査官スウィーニーが、揺れ動く下山事件を担当する中で、見え隠れする謀略機関の影とともに深い闇に呑み込まれていく第一部「骨の山」。東京オリンピックを目前に控えた一九六四年六月、元刑事である私立探偵の室岡が、行方不明となっている探偵小説家の捜索を依頼され、あの下山事件へと引き寄せられていく第二部「涙の橋」。昭和の終わりも近い一九八八年秋から冬にかけて、かつてCIA工作員として日本に派遣された翻訳家ライケンバックに、下山事件によって運命を狂わされた過去が築づく第三部「肉の門」。物語は、東京を舞台にした三つの時代のエピソードで構成されている。東京在住の英国人である著者が虚実取り混ぜた暗黒小説としてものした本作は、日本人によるこれまでの実録・小説にはなかった妖しく深遠な異形の「下山事件」を映していて斬新。資料や記録だけでは掬い切れなかったもの、日本人の視点では目が届かなかった領域が文学によって現出する様に終始圧倒され、心奪わえれるような興奮を覚えた。

No.2 7点 麝香福郎
(2023/11/29 23:05登録)
一九四九年七月五日、国鉄総裁の下山定則が出勤途中に失踪。翌日未明、常盤線の線路上で轢死体となって発見される。自殺か他殺か、対立する意見。大きな力が働いたとしか思えない突然の捜査の打ち切り。迷宮入りした真相について、実に様々な議論が巻き起こった。
上層部の命を受けたGHQの捜査官スウィーニーが、揺れ動く下山事件を担当する中で、見え隠れする謀略機関の影と共に深い闇に呑み込まれていく第一部「骨の山」。東京オリンピックを目前に控えた一九六四年六月、元刑事である私立探偵の室田が、行方不明となっている探偵小説家の捜索を依頼され、あの下山事件へと引き寄せられていく第二部「涙の端」。昭和の終わりも近い一九八八年秋から冬にかけて、かつてCIA工作員として日本に派遣された第三部「肉の門」。物語は、東京を舞台にした三つの時代のエピソードで構成されている。
作者が虚実取り混ぜたノワールの本作は、日本人によるこれまでの実録小説にはなかった妖しく深遠な異形の「下山事件」を映していて斬新だ。日本人の視点では目が届かなかった領域が文学によって現出する様に終始圧倒され、心奪われるような興奮を覚えた。

No.1 7点 YMY
(2022/06/03 22:18登録)
GHQ占領下の東京を描く3部作の完結編。小平事件、帝銀事件を扱った2作に続く本書の主題は下山事件。
1949年。国鉄の下山定則総裁が失踪し、やがて列車に轢断された死体として発見される。GHQ捜査官は総裁の死の真相を探るが、やがてそのGHQや謀略機関の影が浮かび上がる。
さらに64年、五輪直前の東京で失踪した作家の行方を探る探偵の物語。88年暮れ、天皇の病で自粛に包まれた東京に暮らす元CIA工作員の物語が続く。
史実の未解決事件を何かに憑かれたような文体で語る。警察小説、スパイ小説、さらに幻想小説の色合いも交えて、事件を包む闇を描き出す。陰謀論の沼に身を侵しながら、展開には理性を貫き通す。特異な語りを通じて提示される、緻密な迷宮に圧倒される。

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