少年トレチア

作家 津原泰水
出版日2002年02月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 SU
(2024/12/09 19:49登録)
沼地に建てられた巨大なニュータウンの緋沼サテライトでは、たびたび残虐な事件が起こる。住人たちの間では、白シャツ学帽姿の少年トレチアがその犯人であると都市伝説的に語られてきた。ある日、崇の友人・竜介が何者かに襲われ、さらには恋人の有希も失踪する。そもそもトレチアとは、崇たちが子供の頃に熱中した動物殺しや殺人を隠蔽するためにでっちあげた架空の存在だった。ところがトレチアの噂はまことしやかに広がり、十年の時を経て気が付けば自分たちが狩られる側になっていたのである。
物語は群像劇として進み、トレチアを自認する小学生や、サテライトを8㎜フィルム撮影する摂食障害の女、怪魚マカラについて調べる落ちぶれた漫画家など多数のキャラクターが入り乱れる。人工的で淀んだ世紀末のベッドタウンを舞台に、多くの謎と恐怖が複雑に絡み合う、幻想的かつ禍々しい怪作。

No.1 7点 虫暮部
(2022/05/27 15:45登録)
 表題に掲げられた “少年トレチア” は幾つかある柱のうちの一つであって、中心を貫くのは “緋沼サテライト” と言う “場” だと思う。そこに山海の珍味を吟味せずぶち込んだごった煮のスープ。灰汁は取り切れず、美味ばかりではないが、思いがけず澄んだ一杯を掬えることもある。かき混ぜていたら丸のままの怪魚が浮かんできた。誰だこんなもん入れたの。あたったらどうする。

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