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ミステリの祭典

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京都辻占探偵六角 431秒後の殺人

作家 床品美帆
出版日2022年04月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 SU
(2024/01/07 21:15登録)
表題作は、不貞を犯した妻を離婚協議中の写真館主・松原京介が妻との会見後、烏丸六角交差点の路上でビルからの落下物により亡くなる。警察は事故死と断定したが、松原を恩人と慕う駆け出しのカメラマンの安見直行は、妻と不倫相手の謀殺と確信、祖母のすすめる失せ物捜しの達人、六角法衣店を訪ねる。だが店にいた主人らしき青年、六角聡明は追い返されてしまう。
その後、六角はひょんなことから安見の捜査に協力することになるが、松原の死亡時、妻はタクシーに乗っており、犯行は不可能と思われた。松原の死は本当に殺しだったのかというわけで、ハウダニットの謎解き劇が繰り広げられる。
ミステリとしては一貫してハウダニットもので、第二話ではお洒落なカプセルホテルで、第三話ではミニシアターとシネコンの中間に位置するような劇場の寄席で、第四話では繁華街の準中箱規模のクラブで事件発生。舞台的にも道具立てという点でも、京都の現代都市としての側面を浮き彫りにしているところがミソ。また安見と六角が仲直りするきっかけになる出来事をはじめ、随所に怪奇趣向がまぶされている点も見逃せない。

No.1 6点
(2023/08/21 22:45登録)
京都御池通付近にある「六角法衣店」の若き店主六角聡明を探偵役、駆け出しカメラマンの安見直行をワトソン役(三人称形式)とした連作短編集です。収録5編中、最初の『431秒後の殺人』は安見の恩人のカメラマンが、ビル屋上から落下したコンクリートブロックがあたって死亡した事件、最後の『立ち消える死者の殺人』は14年前、六角が12歳の時母親が病院から失踪した事件です。間の3編は二人が遭遇した殺人事件。
2番目の『睨み目の穴蔵の殺人』以外は、ややこしい物理的トリックを使っていて、嫌う人もいるかもしれませんが、発想はどれも悪くないと思いました。表題作はどうしても偶然に頼ったところはありますが、それより最終作、物理的トリック以外の部分で、うまくいくとは思えないところがあります。
人は見かけによらないという言葉がふさわしい話が多いのも、この作家の特徴でしょうか。

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