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ミステリの祭典

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クロームハウスの殺人

作家 G・D・H&M・I・コール
出版日2022年06月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2022/07/25 07:11登録)
(ネタバレなし)
(たぶん)20世紀前半の英国。30代前半で独身の大学講師ジェームズ・フリントは、ウェストミンスター図書館から借りた書物の中に、中年男が年配の男に銃を向けている写真が挟まっていることに気づく。フリントはその直後、写真をうっかり焼却してしまったと思うが、そこに写真の当人らしい中年男性が登場。図書館の司書から情報を得たと称する男性は、写真が演劇中のスナップであることを匂わせ、写真が焼却されたと聞くと名も名乗らず帰っていった。気になるフリントは、図書館の司書から当該の本を自分の前に借りだした男の名を聞きだすが。

 1927年の英国作品。
 序盤の掴みはそれなりに面白い(結局、フリントが燃やしてしまったと思った写真は、勘違いでそのまま彼の手元に残っていた)。そこから少し前に世間を騒がせた殺人事件とその裁判の結果に、ストーリーは繋がっていく。

 しかし物理的に確かにページは進み、内容も一応は理解できているとは思うのだが、ちっともドラマ的には進展を感じられないストーリーという手ごたえで、中盤の展開に関しては本当に退屈。
 名前のある登場人物は故人を含めて60人前後に及ぶと思うが、話の接ぎ穂的にキャラクターをどんどん登場させて、送り手の方で作品があまり薄くなり過ぎないよう、紙幅を稼いでいる感じであった。
(後半、犯罪現場の邸宅のもと隣人、ヴィーシー大佐が出てくるあたりで、ようやくちょっとばかし面白くなったが。)

 あと、脱力もののアリバイトリック(当時の作者たちはマジメだったのだとは思うが)は正直ともかく、もう一つの大技トリックの方はそれなりに良かった。まあほとんど一世紀前だからアリだという気分も大きいが。

 個人的には、クロージングの妙なサービスは悪くはない。な~んか、いかにも本書が刊行された時代なりの(中略)観の一端を覗くようで、これはこれでまあ、ありかと。

 ものの見事に「退屈派」の代表のような作者で作品だけど、まあなんかそんなにはキライになれない。

No.1 4点 nukkam
(2022/06/11 21:06登録)
(ネタバレなしです) 1927年発表の本格派推理小説でシリーズ探偵は登場しません。アマチュア探偵(大学講師)が謎解きに挑むプロットですが、彼1人だけでなく弁護士や犯人と疑われた容疑者の婚約者や怪しい人物を見たという証言者などが捜査に参加します(警察はほとんど登場しません)。被害者が銃を突きつけられている2種類の写真(銃を持つ人物が異なっています)など面白そうなネタもあるのですが捜査が進展しているという雰囲気もなく、かといって謎が深まるという感じでもなく、探偵役を複数揃えたわりには謎解き議論も盛り上がらずとメリハリに乏しい謎解きプロットです。解決も推理より自白に頼っている印象を受けました。コール夫妻の代表作と評価されているそうですが、個人的にはぴんときませんでした(あまりこの作者の作品を読んでいないのですけど)。突然始まり突然終わった締め括りのロマンスも何のために挿入されたのか理解できませんでした。余談ですが論創社版の巻末解説で夫婦コンビ作家について「国内では折原一と新津きよみのほかに例がない」と紹介されてますけど松木警察署長シリーズの警察小説を書いた石井竜生と井原まなみは確か夫婦のコンビ作家だったように記憶しています(折原一と新津きよみのコンビを知らなかったので私もエラそうにできませんけど)。

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