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ミステリの祭典

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デイヴィッドスン事件
プリーストリー博士シリーズ

作家 ジョン・ロード
出版日2022年06月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2022/11/10 22:50登録)
(ネタバレなしです) 1929年発表のプリーストリー博士シリーズ第7作の本格派推理小説です。被害者の行動を調べていく過程で多くの地名が登場するので地図は載せてほしかったですね。トリックもあるのですが本書はむしろユニークなプロットが印象に残る作品で、プリーストリ-博士の推理で犯人逮捕となるのですが物語はこれで終わらないのです。某英国作家の本格派推理小説に前例のあるアイデアが使われていますが、あちらでは犯人の目論見が名探偵によって軌道修正を余技されなくなったのに対して本書では目論見が達成されているのが特徴になっています。犯人の目論見通りになってもプリーストリー博士の名探偵としての名誉が傷つかないように仕立てられているのも本書の個性です。

No.1 6点 人並由真
(2022/07/01 05:57登録)
(ネタバレなし)
 英国の化学装置メーカー「デイヴィッドスン社」の現社長ヘクター・デヴィッドスンは、色と欲への執着が強い42歳の独身男。そんなヘクターは、自社の主力設計技師フィリップ・ローリーに、彼が考案した機器に対して常に30%のパテントを払う現在の契約に不満を抱いていた。ヘクターはローリーを強引に馘首し、さらにヘクターは、自分の秘書でローリーの恋人である女性オルガ・ワトキンスに手を出そうとする。ヘクターの従兄弟で会社の取り締まり役員の一人であるガイ・デヴィッドスンはヘクターに考えを改めるよう意見を述べるが、相手は聞き入れない。そんななか、そのヘクターが殺害されるが、関係者たちにはみなアリバイがあった。

 1929年の英国作品。おなじみプリーストリー博士シリーズの長編第7冊目。
 
 訳者の喧伝では、傑作、傑作との鳴り物入りだが、大ネタ(犯人の正体とその狙い)は評者にも察しがついた。
(たぶん翻訳ミステリになじんでいるファンなら、大方の読者が見当をつけられると思う。)
 で、まあアレよりはずっと後で、アッチよりは……(以下略。)

 それでも事件の組み立てそのものはなかなか面白い。
 一方で20世紀後半以降の法医学なら、すぐに露見してしまうような、あるいは検視官や鑑識がソコを看過するのは強引なようなトリックという部分もあるのだが。

 シリーズ第四長編『プレード街』の少し後の事件簿だが、この頃のプリーストリー博士はまだどこか若々しい感じがあって妙に新鮮に見える。
 巻末の訳者の解説によると、今回の事件は物語世界の中でさる筋に遺恨を残し、次の第8長編まで影を落とすらしい。なんか面白そう。できれば続けて、そっちも読んでみたい。

 傑作とも優秀作とも思わないけれど、佳作~秀作だとは思う。評点は7点に近いこの点数というところで。

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