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ミステリの祭典

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ハイエナの微睡(まどろみ)
刑事部特別捜査係

作家 椙本孝思
出版日2018年07月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2022/05/16 14:54登録)
(ネタバレなし)
 椙本作品はこれで五冊目。読むもの読むもの、作風はバラエティに富んでいながらどれもトリッキィな仕掛けがあって、いかにも新本格作家という感じで好ましい。

 で、この作品はメルカトルさんのレビューを拝見するまでノーチェックだったのだが、あの椙本孝思が警察小説? しかも何かやはり大きな仕掛けがあるらしい? とうかがって、興味が湧いて読んでみてみた。

 リーダビリティはいつも通りに高く、2時間半くらいで読了できるが、ああ……と、クライマックスでは、確かに思わぬ方向から奇襲される感じで驚いた。サプライズがあると当初から裏表紙などで謳っておきながら、それでもちゃんとビックリさせてくれるとは結構なことである。
 プロローグの意味合いが、そういう形で重要度を増してくるのも良かった。

 メルカトルさんのレビュー通り、ミステリのフックっぽい、読者の興味を刺激するような部分が実は……というのがいくつか目につくのはナンだが、そこは広義のミスリードみたいなものと考えましょう。そういう手法は空回りというか腰砕けにも繋がるので、100%首肯はできないが。

 いずれにしろ器用な作家が、これまで手を出したことのないジャンルに挑戦して、うまく成功を収めた感触の一冊。佳作~秀作。

No.1 6点 メルカトル
(2022/04/29 22:53登録)
宗教都市・深石市で、奇妙なバラバラ死体と、冷蔵庫に圧し潰された変死体が発見された。被害者はともに警官。捜査一課の佐築勝道は、両現場で見つかった不気味な意匠の社章から、ある地元企業の関与を疑う。しかし理不尽な組織の力学と謎の圧力が捜査を阻み、無邪気な女が勝道を悩ませる―サバンナを彷徨うような果てなき猟奇殺人捜査。刑事がたどり着く驚愕の真相とは?ラスト40ページで世界が一変する衝撃の警察小説。
『BOOK』データベースより。

サイコサスペンス的なのかと思っていたら、全然違いました。出だしこそバラバラ死体で始まり、猟奇的な雰囲気溢れるスリラーの様ですが、結構ガチガチの警察小説です。物語が進むと次第に私の願っていない方向へ滑り出し、巨大企業や新興宗教が絡んでかなり硬質な作品だと判ってきます。そんな中、金髪で言葉遣いの荒っぽい都と名乗る女が登場してから、主役の佐築よりも彼女に感情移入している自分に気付きました。殺伐とした話の中で唯一都の存在が私を癒してくれ、彼女の出番を心待ちにしたりしていました。

売れていないとは言え流石にプロの作家、これまでのミステリとは一線を画す作風に、一寸した畏怖を覚えました。なぜ死体をバラバラにし、頭部を電子レンジで加熱したり胴体をテーブルに置きナイフとフォークを並べたのかなどの動機に期待してはいけません。ただ、作品全体に仕掛けれたトリックには唖然とさせられました。これは新機軸だと思いますよ。

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