home

ミステリの祭典

login
あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続
三島屋変調百物語

作家 宮部みゆき
出版日2018年04月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 猫サーカス
(2023/12/24 14:02登録)
忌まわしい神を呼び込んでしまい家族が不幸に見舞われる「開けずの間」、亡者を起こす声を持つ女性が姫君に仕える「だんまり姫」、面を監視するという奇妙なお役目の「面の家」、百両で写本を請け負った浪人の数奇な運命が語られる表題作、三島屋の長男が子供の頃に出会った不思議な猫の話「金目の猫」の5編。宮部みゆきの怪談の真骨頂は、恐怖より悲しみが前面に出てくるという点にある。なぜ途中で引き返さなかったのか。なぜ間違いに気付けなかったのか。彼らの弱さや狡さ。誰でも心の持って行き場を間違えることはある。怪異そのものより、人の後悔を描き出すので宮部みゆきの怪談は、悲しく優しいのである。だがそれだけではない。自分の弱さや狡さが起こした出来事ならなおさら、人には話せない。けれど三島屋の百物語は聞いたら聞き捨て、その場限りで外に漏らすことはない。誰にも言えず心にわだかまっていた出来事を、おちかに聞いてもらうことで、客はその重石を下す。つまりカウンセリングなのだ。

No.1 7点 ALFA
(2022/03/15 09:01登録)
シリーズ第5巻。収められた5話のほとんどが100ページを超える中編なのでボリュームたっぷり。
今回はおちかを取り巻く人間模様が重要になる。第4話の二つの話をきっかけに、おちかは結婚を決意する。似合いの相手だが、もっと前振りがあってもよかった。
百物語の聞き手を引き継ぐ富次郎は粋で優しい男だが、おちかほどの屈託は抱えていないため少し頼りない。おそらく回を重ねるうちに深みを増すのだろう。

それにしても、おちかを想いながら死んだ松太郎をどこかで魂鎮めしておく必要があったのでは?きっと重厚な一話になったはずなのに残念。事始の「家鳴り」だけではいささか中途半端。

第5話「金目の猫」は三島屋の長男伊一郎が弟を相手に語るシンプルな怪異譚。聞き手富次郎の予行演習にもなっている。伊一郎の長男らしいキリっとしたキャラが秀逸。

2レコード表示中です 書評