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ミステリの祭典

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殺人は自策で
ネロ・ウルフ、ドル・ボナー

作家 レックス・スタウト
出版日2022年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2022/04/27 15:47登録)
(ネタバレなし)
 ネロ・ウルフのもとに、彼が愛読する作家フィリップ・ハーヴェイが仲間の作家や出版業界の関係者を連れて依頼に来た。ハーヴェイは作家&脚本家連盟に所属し、盗作問題調査組織の代表をしているが、現在、若手女流作家のエイミー・ウィンと劇作家モーティマー・オシンが、それぞれ別のマイナーな物書きから自作を盗作したと訴えられているという。実は過去にも類例の案件が3件あり、この各件は相互に関連があるらしい。ウルフとその助手の「ぼく」ことアーチー・グッドウィンは事実の調査に乗り出すが、やがて予期せぬ殺人事件が発生する。

 1959年のアメリカ作品。ネロ・ウルフシリーズの長編、第22作。
 翻訳書の巻頭に登場人物の名前がずらりと並んでいるのを見ると、うえ~となるが、人物メモを取りながら読めば意外にストレスはない(ただし本作の場合は、盗作問題で原告と被告側の物書きだけで10人近く、さらに出版関係者も続々と出てくるので、人物相関図を作った方がいいかもネ)。

 それでも全体のページは220ページちょっとと薄目。人物の配置さえ読み手の中で整理できれば、スラスラと読める。
 いつもの外注チームをフルに使うウルフ一家の機動力ぶりもパワフルで、個人的にはシリーズの長編の中ではかなり楽しめた方。
 ラストの犯人像は、なんか……(中略)。英国ミステリのあの大名作を想起させる、かなり(中略)なものを覚えた。
 スタウトが今回本当にいちばん書きたかったのは、この真犯人のキャラクターだったんじゃないかという気さえする。
 パズラーとしてはツメの甘い感じもしないでもないが、どっちかというと都会派の行動派私立探偵小説として佳作~秀作。

 ハードボイルドかな? うん、被害者に対してある種の責任を感じ、自分に枷を設けるウルフの今回の思考はそれっぽいね。わがままおやじではあるけれど、基本はプロの矜持を尊ぶウルフの真面目さがよく出た一編。
 実質6,5~6.8点くらいか。

No.1 5点 nukkam
(2022/03/09 11:04登録)
(ネタバレなしです) 1959年発表のネロ・ウルフシリーズ第22作の本格派推理小説です。複数の作家が盗作を訴えられるという事件が発端です(数件は既に賠償金を支払っています)。ウルフは盗作されたと主張の原稿を調べて全て同一人物の作と推理します。この推理の根拠となる原稿がきちんと提示されないので読者にぴんと来ないと思いますが、もし全部掲載したら相当長大なページが必要でしょうからこれは仕方ないという気もします。中盤までの展開がまどろこしいですが殺人事件が起きるとソール・パンザーたちいつもの面々だけでなく「手袋の中の手」(1937年)で活躍した女性探偵ドル・ボナーにも協力を仰いでいます。もう1人の女性探偵サリー・コルベットについては私はよく知りません(後年の「母親探し」(1963年)にも登場との文献がありましたが)。ウルフが自虐的になって解決まではビールも肉も摂取しないと宣言したり犯人に対してかなりの敬意を表したりしているのが印象的ですが、謎解きとしては推理説明された証拠が非常に脆弱に感じられました。そもそものきっかけである多重盗作詐欺の動機も曖昧です。

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