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ミステリの祭典

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京都貴船連続殺人

作家 池田雄一
出版日1994年12月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 4点 nukkam
(2023/04/18 08:25登録)
(ネタバレなしです) ミステリー作家としては1982年デビューと遅咲きの池田雄一(1937-2006)の第16作目にして最後のミステリー作品となった1994年発表の本格派推理小説です。シロウトまがいの女探偵(と叩き上げの刑事からライバル視される)、エリート警視正(女探偵ともちつもたれつの関係)、叩き上げの刑事(女探偵はヘボ刑事と見下す)のそれぞれの捜査が描き分けられています。乱れた人間関係を重点的に描いているからか、通俗的要素が非常に濃いのは好き嫌いが大きく分かれそうです。終盤に謎解きが盛り上がるところはそつがありませんが、騙しのトリックをピンポイントで成功させているところは好都合過ぎな気がします。皮肉たっぷりな幕切れにはちょっと笑いました。

No.1 5点 人並由真
(2022/03/05 07:56登録)
(ネタバレなし)
 京都貴船神社の境内。深夜に行われる怨念の丑の刻参り。やがてその呪詛に影響されたように、京都の大手料亭「加倉井」の女将・加倉井康代が午前二時頃に凄惨な死を迎えた。さらにその家族がまたひとり犠牲になる。身の不安を感じた康代のとある親族は、私立探偵事務所「すみれリサーチ」を営む若い美人探偵・石坂すみれに調査を依頼。すみれは加倉井家に恨みを抱くと思われる容疑者の周囲に潜入捜査するが、やがてまた新たな事件の展開が。

 評者は池田雄一の小説作品は、これが初読み。
 シナリオライターとしての作者には、昭和のテレビドラマの脚本家としてかなり多くの番組で付き合ってきたはずで、番組のOPやEDに表記されるその名前にも馴染みがある。ただし具体的に、エピソード単位でどの番組のどれが良かったとは、即興で言えない。そんな程度の距離感である。
 
 本作は1994年の文庫書き下ろし。作者は21世紀の初めに他界されたようで、この作品はおそらく晩期の一作(もしかしたら最後のミステリ?)ということになるようだ。
 ストーリーはオカルトチックな丑の刻参りの呪いに連続殺人事件がからみ、適度なエロ描写を混ぜ込みながら行動派の女性探偵の捜査と推理で展開していく。さらにもう一人の探偵役として、和製コロンボ風の中年刑事も別働。後半にはちょっとライバル関係になりながら、最後には協力体制で事件の謎に迫る。

 B~C級の昭和風俗ミステリ(あ、正確にはもう平成の作品か)かと思いながら読んでいったら、終盤にはちょっとクロフツっぽいアイデアというかトリック(具体的にクロフツのどのその作品というのではなく、いかにもクロフツがやりそうな感じの)が用意されており、謎解きミステリとしてもそれなりの手ごたえは感じた。軽いキャラクターものに全体を仕上げながら、ひとつふたつ骨っぽい部分は残しておいたところは好感を抱く(そんなに大騒ぎするほどのアイデアやトリックの創意でもないけれど)。

 評点は悪い意味でなく、この数字。もうちょっとで6点というところ。

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