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ミステリの祭典

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朝と夕の犯罪

作家 降田天
出版日2021年09月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 8点 虫暮部
(2022/03/24 12:19登録)
 この人達はなかなか器用に引き出しを使い分け、しかもそれが表層的な借り物には見えない筆力を具えているのではないか。
 3分の2まで読んで、“もう大きな謎は残ってないじゃん。あとは後日談?” と思ったら、思いがけぬところから風呂敷を何枚も引っ張り出して来て感心した。しかしこれ、事実をどこまでどう明かすかは熟考を要するだろう。一度明かしたらチャラには出来ないから、警察官達のスタンスに私は賛同しかねるな。

No.1 5点 HORNET
(2022/02/27 17:09登録)
 アサヒとユウヒの兄弟は、幼い頃、父親と三人でオンボロ車での放浪生活をしていた。賽銭泥棒や万引きで糊口をしのぎながらの生活だが、それでも家族3人の絆があった。やがて時は経ち、アサヒとユウヒは離れてそれぞれの生活へ。大学生となったアサヒはある日、10年ぶりに弟のユウヒに再会する。久闊を叙する間もなくユウヒがもちかけてきたのは、「狂言誘拐」への協力だった―

 狂言誘拐から8年後、あるマンスリーマンションで起きた幼児遺棄事件で第2部となる本編が始まる。この遺棄事件の捜査を進めるうちに、8年前に起きた狂言誘拐事件とのつながりが見えてくるという構成。遺棄事件の加害母が、狂言誘拐で被害者役をした女ということまではまぁ予想通りなのだが、そのあとの展開がなかなかよく仕組まれていて、「ユウヒは今どこに?」の解はそれなりに意表を突かれた。
 児童虐待や貧困、親子や兄弟の絆という面でのテーマ性も感じられて、面白く読むことができた。

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