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ミステリの祭典

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作家の秘められた人生

作家 ギヨーム・ミュッソ
出版日2020年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/02/01 09:06登録)
(ネタバレなし)

 2018年。地中海のボーモン島。「ぼく」こと、作家になるため2年間の小説修行(実作と出版社への投稿)を続けたが、成果が出せないフランス人の青年ラファエル・バタイユはボーモン島に赴き、そこに20年間隠棲するかつての大流行作家ネイサン・フォウルズとの接触を試みる。同じころ、女性新聞記者のマティルド・モネーもまた、ネイサンに会うために島に渡っていた。だがその島では、惨殺された女性の死体が見つかり、島は非常事態として海軍の管理下のもと封鎖状態に陥る。やがて秘められた奥深い真相が……。

 2019年のフランス作品。本邦でも人気作家となったミュッソだが、評者は読むのは本作が初めて。
 
 一人称の主人公ラファエルのパートは紙幅的には全体の半分弱で、あとはネイサンやマティルドたち別の主要キャラの三人称叙述が交錯する。
 多人数視点での叙述は下手に進めると、読み手の煩雑さを招くばかりだが、本作の場合はこなれた丁寧な訳文の良さもあってか、ストーリーをテンポよく起伏豊かに読ませる効果をあげている。
 本文300ページちょっとと短めの話だが、仕掛けがふんだんでしかも終盤のコンデンスぶりは、良い意味で旧来のフランスミステリらしいトリッキィさを継承した、21世紀の新世代作品という感じ。
 
 とはいえ全体の4分の3~5分の4あたりで、全体の構図が見えかけて、おいおいこれでこのまま終わるんじゃないだろな、と思ったら、大丈夫ちゃんと(中略)。
 まあ大筋は語られたとおりのものでよいのだろうが? さらにまたミョーなギミックめいたものもあり? その辺もまた本作の個性。
 細かいことを言えばちょっと作劇の進行の上で強引な感じの部分もないわけではないが、まあ……グレイゾーンか。
 
 余談ながら、小説家志望のラファエルがシムノンのファンであり、ほかの登場人物に『汽車を見送る男』(や他の数作)を勧めているのが楽しかった。まあ『汽車~』は、先にリュカの登場するメグレものを何冊か読んでもらってから読ませるのがベターだと思うけど。
 評価は7点に近いこの点数ということで。

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