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ミステリの祭典

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トマト・ゲーム

作家 皆川博子
出版日1981年12月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2023/12/09 23:44登録)
そのうち読まなきゃね、と思っていた作家。赤江瀑の後継者みたいに言われることもあるからねえ。いや70年代の大昔何かのアンソロで「漕げよマイケル」を読んだことがあって、その時にタイトルと皆川博子という名前がしっかり刷り込まれた。なので「漕げよマイケル」収録のこの短編集から手を付けようか。

最初期の短編集で5作収録。
ライダーたちが「肝試し」として、コンクリの壁に向かってフルスロットルで突っ込んでスピンターン。一歩間違えばコンクリの壁にぶつけたトマトになるリスクを侵しながら、ギリギリ壁に近いところでターンする度胸比べの「トマト・ゲーム」。ライダーが集う喫茶店のマスタと、場違いな家政婦は若い日に米軍基地で知り合い、トマト・ゲームを通じて因縁があった。若者の三角関係でこのトマト・ゲームが再現され...という話。
これを「青春小説」にしないのが作者の手腕。あくまで中年のマスターと家政婦の過去の因縁とその決算がメイン。女性作家だと同性に辛辣な面がある、というのは通例だが、家政婦の屈折したキャラがナイス。
「アルカディアの夏」はコノハズクを買う少女とその母と通じる元家庭教師の話。コノハズクのエサとしてハツカネズミを繁殖させるとか、けっこうエグイ話なのが、やはり「青春小説」ではなくて、赤江瀑風のエロスと倒錯のテイストが滲み出てくる。
で「漕げよマイケル」が一番ミステリしている。受験競争が動機で計画殺人を犯す高校生を倒叙で描いている。ここにも同性愛興味やら、悪辣な罠(これにトリック風なものがある)、そして親への幻滅。いや評者これ読んだの中高生くらいのはずだから、自分の立場でいろいろ妄想したのかなあ?赤江瀑同様に、外形的にはミステリでも、ミステリから逸脱する部分が大きい。

うん、そんな感じ。今まで読まずに取っておいた価値がしっかりありそう。楽しみ。

No.1 6点 虫暮部
(2021/11/30 12:42登録)
 最初期の作品集、にしては随分手馴れた書きっぷりではないか(この時点で四十代だが、私は年齢はあまり関係ないと思うので)。
 時代風俗のせいもあり(頭脳警察がゲスト出演!)、あくまで“一世代前の物語”を遠くから眺める感覚だけれど、「アルカディアの夏」にはクラクラした。部屋の臭いまで感じられそう。

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