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ミステリの祭典

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月の落とし子

作家 穂波了
出版日2019年11月
平均点2.50点
書評数2人

No.2 1点 文生
(2021/11/06 12:27登録)
月面に降り立った宇宙飛行士が謎の死を遂げ、それが未知のウィルスによるものだと判明するまでは緊迫感に満ち、読み応えがあります。
しかし、面白いのはそこまで。
宇宙船のクルーたちが危険なウイルスに汚染された死体を回収して地球に持ち帰りたいと言い出したのには唖然としてしまいました。しかも、その理由が仲間を故郷の土で眠らせてやりたいからという超センチメンタルなもの。とても科学者の態度とは思えません。そのうえ、パンデミックの危険性があることを承知しながら、結局、死体の回収を許可してしまうNASAの判断の甘さも信じがたいものがあります。日本に舞台を移してからも、ヒューマニズムを取り違えた独善的な言動のオンパレードなので読んでいるあいだ常にイライラしていました。根本的に自分とは相容れない作品です。

No.1 4点 虫暮部
(2021/11/06 10:17登録)
 危険を承知で遺体を回収し、地球に持ち帰りたがる。なんと感傷的な。この事故は人災でしょう。
 更に――志願して現場に出たのに感情的になり暴走。
 タクシーの中で無防備にペラペラ話す。
 特定の個人に固執して封鎖から出損ねる。
 何が出来るわけでもないのに、フラフラ出歩き封鎖ラインを確認しに行く。
 など、登場人物たちの愚かしさ、が言い過ぎなら心の弱さにイライラした。勿論それがドラマを生むわけだが、いちいち分かれ道で悪い方に進む感じがどうにも……。
 結末はやけに甘く、アレは被害を拡大させただろう。大の虫を生かして小の虫を殺すしかない時は、そうするべきだと私は思う。霧島補佐官が一番共感出来た。

 アガサ・クリスティー賞受賞作だが、あくまでパニック小説。極限状況の中でパズラーに展開するわけではない。

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