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ミステリの祭典

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ヴィンテージガール 
仕立屋探偵 桐ケ谷京介

作家 川瀬七緒
出版日2021年02月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 パメル
(2024/09/05 19:31登録)
寂れた団地の一室で、十代前半と思われる少女が撲殺された事件があった。十年の間、犯人はもとより少女の身元さえ不明だったため、警察は公開捜査に踏み切る。たまたまテレビ番組を見た高円寺で仕立屋を営む桐ケ谷京介は、遺留品である少女が着ていたワンピースに目を留め、引っ掛かりを覚える。
京介は高円寺南商店街に住む、仕立屋兼服飾ブローカーだ。メーカーと時代に取り残された凄腕職人の間を取り持っている。美術解剖学を専攻した彼は、人が着ている服のしわや歪みなどから、その人が受けた暴力や、抱えている疾患を読み取ることが出来るのだ。
この特異な能力は京介を苦しめてもいた。虐待されている子供や、DVを受けている女性を何人も発見してきたが、確かな根拠とならずに、通報しても無に帰すことが多々あったからだ。そんな経験と、非常に感情移入しやすい性格も加わり、十年経っても身元すら判明しない少女の境遇に心を揺さぶられた京介は、警察とは別のアプローチで事件解決にのめり込んでいく。さりげなく繰り出されるマニアックな専門知識を用いて、クールな面差しの裏側には温かな人間味が感じられる。
時代遅れな色柄で、少女向きではないが丁寧に作られたオーダー品。矛盾だらけの遺留品のワンピースを手掛かりに、真相に迫っていくプロセスが読みどころ。また京介とコンビを組むヴィンテージショップ店長・水森小春、手芸店の老女など脇役陣の造形も魅力たっぷり。物語としての深みもあり、謎解きの妙もある。服飾デザイナーでもある作者の服飾愛も随所から伝わってくる。

No.1 8点 虫暮部
(2021/10/05 12:40登録)
 単なる衒学趣味ではなく知識をミステリの文脈に落とし込む手管は相変わらず冴えている。あれらのネタが現実にどの程度転用可能かはともかく、アクション漫画等の“有り得ない精度で技を決める場面”にも似た、笑いと爽快感を伴う感動があった。集合知探偵とでも言うべき多彩な登場人物も楽しい。

 ただ結末/犯人についてはモヤモヤする。
 疑われた理由は窃盗行為だけで、しかも“これを盗ったところで無意味なことはわかってた”とのこと、要は余計なことをしたせいで露見したわけで、納得しがたい展開だな~。
 そして私の意見としては、既に回復不能な状態なら、隠滅を優先して逃げたのは非難出来ない。死者の為に生者の未来を変えるのは、あまり良いことではないと思うのだ。

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