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ミステリの祭典

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三幕殺人事件

作家 草野唯雄
出版日1990年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2021/09/10 06:36登録)
(ネタバレなし)
 その年の12月。群馬県の温泉町・下津の温泉源がいきなり枯渇した。窮地に陥った現地の人々は、土地の顔役・松井正雄の口ききで、大手のゴルフ会社「逸見ゴルフ」を誘致し、大規模なゴルフ場の開設で町おこしを図る。だがこれに地元の「友愛老人ホーム」の所長・由利勝と入居者の老人たちが反対。大量に農薬を使って整地するゴルフ場の建設は環境的に有害と主張し、弊害の少ないスキー場の施設を代案として提出した。だがそんなゴルフ場開設の反対運動に、松井の息のかかった暴力団・星野組が嫌がらせを始めた。そんな中で由利所長が突然の死を遂げ、さらにまた周囲に死者が出る。由利所長の美人の娘・美香と、老人ホーム入居者の有志の老人4人は消極的な態度の所轄の警察をよそに、事件の真相に分け入っていくが。

 光文社文庫版で読了。
 文庫版の解説で郷原宏が書いている通り、草野の衝撃作(?)『七人の軍隊』の姉妹編みたいな内容で、中身はもうちょっと明朗なユーモアミステリ寄り(正確には郷原は解説のなかで、『七人の~』の「続編」のような作品、といっているが、設定も登場人物も関係なく、単に老人が主人公という点が共通しているだけなので、こ場合は「姉妹編」の方が呼称としては適当じゃないかと)。
 ぶっちゃけその全編のユルさもふくめて、赤川次郎の平均作とほとんど変わらない出来。

 特に暴力団に嫌がらせされた老人たちの仲間の一人に元刑事がいて、うーん、拳銃でもあればなあ、とぼやいていると、本当に天から降ってきたように拳銃が目の前に転がってくるアホな展開には、大爆笑した。
 さすが草野唯雄、この天然ぶりに敵う作家はオールタイムの日本ミステリ史上にもそうはいない。
 後半に一応はアリバイトリックらしいものも用意されているが、子供向け推理クイズのネタみたいなものである。
 
 ただしごく軽い、ユーモア(&ちょっとだけペーソス味の)ライトパズラーとしては、登場人物(特に老人たち)に一応の愛嬌があるので、楽しくは読め……ないこともない。まあ昭和最後の時期のC級ミステリとしては、それなりに愛せる一冊だ。
 万が一、こんなものばっかり読まされたらそりゃタマらんが、タマにはこんなのもイイでしょう?

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