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ミステリの祭典

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グランダンの怪奇事件簿
オカルト探偵ジュール・ド・グランダン

作家 シーバリー・クイン
出版日2007年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2022/06/26 15:51登録)
(ネタバレなし)
 吸血鬼、実体化する霊魂、ゾンビー、怨霊、人狼、異端者として惨殺された者の呪い……様々なモンスターや妖怪、死霊などを相手に活躍する、フランス人のオカルト探偵ジュール・ド・グランダンの事件簿。

 作者シーバリー(シーベリー)・クイン(1889~1969年)はワシントン生まれのアメリカ作家。1917年に処女短編を書き、「ウィアード・テールズ」の創刊号(1923年10月号)から連載も開始した。

 クインの看板作品で最大の人気キャラクターがこのド・グランダンで、「ウィアード・テールズ」の1925年に初登場。以降、のべ27年間にわたって92本の短編と1本の長編が書かれた大ヒットシリーズとなった。
 本書はそのド・グランダンのデビュー作品「ゴルフリンクの恐怖」をふくめて10編の短編を収録した最初の短編集。1966年にアメリカで刊行された原書「Phantom Fighter」を作者の序文付きでそのまま訳出したもの。

 思い起こせば評者が初めてド・グランダンに会ったのはミステリマガジン1974年7月号の「幻想と怪奇 オカルト探偵特集」でのこと。
 ミステリマガジンは1970年前後からだったか? 毎年の7~8月号に、納涼お盆の意味合いで、そのシーズンに「幻想と怪奇」特集をやっているが、この時はちょっと趣向をこらしてゴーストハンターものの、あるいは広義のオカルト探偵といったシリーズキャラクターばかりを集めて特集を行なった。

 その時の面子が、カーナッキにサイモン・アーク、ダーシー卿、ロン・グーラートのマックス・カーニイと、そしてこのド・グランダン(作者名シーベリー・クイン表記)であった。当時、子供だった評者はカーナッキとダーシー卿は名前は知っていたし、サイモン・アークの作者ホックにはもちろん馴染みはあったのだけれど、マックス・カーニイとド・グランダンに関してはまったく初見。
 特にこのド・グランダンの掲載エピソード「月の光」は一応読んでみたが、いまいち面白さがわからなかったのをなんとなく覚えている。
(そー言えばその「月の光」はあれ以来読んでないな。いま読んだら、さすがにもうちょっと楽しめるだろう。)

 でまあ時は過ぎて21世紀。創元からはくだんのド・グランダンの唯一の長編までが翻訳紹介。日本でもそこそこメジャーになった? ド・グランダンだが、そーいえば15年ほど前にちゃんと一冊短編集が翻訳刊行されてるんだよなあ、仁賀先生、ありがとう、ということで思いついて読み始めてみた。

 しかし最初に手に取ってから、読了までに時間がかかった(汗)。自分の記録メモを見ると、読み始めたのが今年の1月下旬で、たった10編のエピソードを消化するのに、ほぼ半年もかけている(大汗)。

 いやこの手のバラエティに富んだモンスターや妖怪とのバトル事件簿ものは、特撮テレビの『悪魔くん』や『コルチャック』を含めて大・大・大好きなのだが、まったく同じようには行かなかった。
 
 理由はいろいろとあって、基本的にお話の作りが事件の推移主体で少なくともこの初期編ではそんなにド・グランダンと相棒のワトスン役、医師トロウブリッジのキャラクター的な魅力が前面に出ていないこと(それでも本書の中盤からド・グランダンは、かなりとんがった性格が感じられたし、終盤に収録の話などでは結構、ハメを外したりしている)。あと一番大きい事由は、一本一本に結構な満腹感があり、サクサク読み進めるタイプの連作ではなかった、ということ。これはこれで仕方がない。
 とはいえ最後まで読み終えてしまうと、ああ、もう終わりかとちょっと寂しさがよぎるのはいつものこと。
 まあド・グランダンものは、雑誌やアンソロジーなどで読める、日本語にはなっているエピソードもそこそこあるみたいだけどね。

 マイベストエピソードは、ビジュアルイメージ的に不気味な「死人の手」、語り口が効果的な「サン・ボノの狼」と同じく「フィップス家の悲運」、魔的なものの描写がなかなか恐ろしい「銀の伯爵夫人」など。
(実を言うと数か月前から読んでいたため、前半の収録作品は記憶と印象が相応に薄まってしまっている~汗~)。

 もう1~2冊くらい翻訳短編集は出してほしい。ただし今度はもっと気軽に読める文庫みたいな仕様でお願いしたいところです。

No.1 4点 八二一
(2021/04/27 20:35登録)
オカルト探偵ものの中でも、レ・ファニュやブラックウッドやホジスンや、ラムレイに較べて格段に軽く、いってみれば、オカルト探偵ものの軽ハードボイルドといったところ。

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