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ミステリの祭典

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ワン・モア・ヌーク

作家 藤井太洋
出版日2020年01月
平均点8.00点
書評数2人

No.2 8点 小原庄助
(2024/08/21 08:19登録)
二〇二〇年三月六日、オリンピックを間近に控えた東京に、一人の男が降り立つ。身分を偽り、不穏な金属の塊とともに入国した男の名はイブラヒム。元イラクの核物理学者だ。そして流暢なアラビア語で彼を案内する。女性通訳ボランティアは、デザイナーとしても活躍する但馬樹。二人は東京で原爆テロを起こし、新たな核被災地とするための協力関係にあった。警視庁で外国人が絡む犯罪を担当する早瀬隆二と高嶺秋那、かつてイブラヒムの仕掛けたテロに巻き込まれた経験を持つ国際原子力機関の技官・館野とCIAエージェント・ナズらは、テロリストの真意を探るため奔走し、原爆の実験可能性について検討を重ねるが、三月九日、ついにテロ予告動画が流れる。
日付が示唆する通り、東日本大震災とそれに伴う福島原発事故が、本書を貫く太い背骨になっている。未曽有の災害を前に、知識・情報・技術・感情、何を拠り所に、どう対峙するべきか。リアルな人物・技術描写に引っ張られ読み進めるうちに、あの時悩んだこと、思い至らなかった事、そしてこれからも考え続けなければならないことが、次々と脳裏をよぎる。強烈な風を吹かせる極上のタイムリミット・サスペンスだ。

No.1 8点 糸色女少
(2021/04/22 23:15登録)
福島第一原発事故があったのと同じ三月十一日に東京で原爆テロを起こすという予告をめぐる三日間の攻防を描いた作品。
それぞれ目的は異なるものの表面上は手を結んでいる二人のテロリスト、彼らを追う原子力の専門家とCIAのエージェント、そして警視庁公安部外事二課の刑事たち。という三組の動きを中心に追いつ追われつ、騙し騙されのサスペンスが白熱の展開を見せる。
作中の東京はほぼ現実そのもので、徹底したリアリズムを基調にすることで作中のテロ計画に説得力を持たせている。危機を描いた国際謀略小説にして警察小説である。

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