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ミステリの祭典

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血縁

作家 長岡弘樹
出版日2017年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2021/04/15 22:26登録)
~親しい人を思う感情にこそ、犯罪の盲点はある。誰かに思われることで起きてしまう犯罪。誰かを思うことで救える罪~
ということで、作者得意の短編集。2017年の発表。

①「文字盤」=コンビニ強盗を追う田舎警察署の刑事。彼には独特の捜査方法があるのだが、その捜査を行ううちに”ある人物”に目を付けることになる。
②「青いカクテル」=父親の介護をする「姉」。弁護士と言う仕事をしながら厳しい日々を過ごす「妹」。介護をテーマにした作品は数多いけど、本作も事件の根は介護される人の「尊厳」ということ。
③「オンブタイ」=これも介護、介助?がテーマとなる作品。タイトルは聞いただけでは?だが、最後にはその意味が分かる仕掛け。
④「血縁」=うーん。本当の姉妹でここまでのことをするのかなぁ? どうもリアリティにかなり欠けるような気が・・・。でも女性同士だからなぁ・・・あり得るかも。
⑤「ラストストロー」=これもかなり特殊な状況。死刑囚に刑を執行する役どころの3人に纏わる物語。その心は相当に複雑。だからこそ・・・いろいろ起こる、ということか?
⑥「32-2」=意味深なタイトル。何かと言うと、正解は「民法」。民法第32条の2項がテーマということ。なのだが、これもかなり特殊な状況。こういう状況としても、こんなことやるか?という感じ。
⑦「黄色い風船」=舞台は死刑囚を収監する刑務所。悩みを書いた札を黄色い風船に巻き付け飛ばす⇒気持ちが軽くなる、ということ(らしい)。

以上7編。
短編集の名手らしく、いろいろなアイデアを惜しげもなく投入された作品集、なのだろう。
ただ、上にも書いたように、どうにも無理矢理感のあるプロットが目に付く作品だった。
プロットのためのプロットとでも表現すればよいのか、強引にパズルのピースに当てはめたところ、嵌まったと思った刹那、すぐに崩れたような感覚。

それだけ良質な短編集を量産するのは難しいということなんだろう。
でも、作者の拘りとしての短編集はこれからも続けてほしいなぁ・・・

No.1 6点 まさむね
(2021/03/14 20:49登録)
 家族をテーマにした短編集。イイ話から黒い結末の話まで、幅広いです。
 表題作がベスト。作者らしさという面では「文字盤」や「黄色い風船」に色濃く表れていました。最近の作者の短編集の中では上位に入ると思います。いくつか気になる「穴」もあったのですがね。

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