ペスト |
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作家 | アルベール・カミュ |
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出版日 | 1950年01月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 5点 | 虫暮部 | |
(2021/09/01 11:30登録) 人がバタバタ死ぬ阿鼻叫喚地獄絵図が繰り広げられると思いきや、非常に冷徹で整然たる物語。死臭が希薄で期待外れ。ペストと言う病をあまりリアルにイメージ出来ず。 少年の死ぬ場面が一番良かった。新聞記者の試みた場当たり的でテキトーな脱出計画には脱力(あれはボられていただけでは……?)。 舞台は少し昔のアルジェリア。医療体制がどんなものだったか知らないので、野蛮だと眉をひそめたり案外進んでいると目を瞠ったり。でも無知なのは現在の医療についても同じか……。 |
No.1 | 8点 | 斎藤警部 | |
(2021/02/19 17:00登録) 或る人物の書いた手記が時折、別の人物の書いた手記を引用しながら進むという構成の本作は、ささやかな叙述トリック的なものを含んでいるのですが、書評サイト等を見るとそこんとこ普通に(ほとんど無意識で)ネタバラシされてますね。。いくら狭義のミステリ小説じゃないからと言って、そこは伏せておいた方が感動もより大きいと思うのですよ。。小説なんだからよ。。 コロナ環境でよく売れている様ですが、実際読んでみると、今の状況と(時系列込みで)符合する箇所のあまり遍在っぶりに舌を巻いてしまいます。本作では疫病の一旦終息までが語られます。これから終息の時を迎えんとする(かも知れない)現実世界でも果たして本作で描かれたような現象が今後起きるのか、優しく見守って行きたいものです。 本作でペストが時ならぬ蔓延を見せるのは第二次大戦後アルジェリアの中都市一つだけですけど、COVID-19の方は地球の全陸地を跋扈、その大部分はネットで繋がった高度IT化社会(言い方が古いw)。そういった違いも少し念頭に置いてアナロジーを脳内拡大させながら読むとまた一段と興味深いかも知れません。 確かに理解しづらい箇所には出くわします。それをハイジャンプで上回る面白さがあります。印象的なプレーズや台詞も頻発。広義のミステリにギリギリ含まれる(この時代に不謹慎ですが)エンタテインメント書として読んでみてはいかがでしょうか。と言っても冒険小説でもサスペンスでも政治スリラーでもなく、感触はやはりハードボイルドです。(チャンドラーを思わす夜の海のシーンは本当にアンフォゲッタブル。)友情の喜び、愛の苦しみ、生きる迷い、有難み等々を一歩引いた観測点から冷静に叙述している、実はそこに、前述した叙述トリック的なものが絶妙に機能しているわけですが。。 |