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ミステリの祭典

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人獣細工

作家 小林泰三
出版日1997年06月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 5点 パメル
(2025/11/17 19:32登録)
単なるホラーではなく、SF的設定と極めて繊細な心の揺らぎが融合した3編からなる短編集。
「人獣細工」先天性の病気でほとんどの臓器に欠陥があった少女は、医師である父親によってブタの臓器を身体の隅々まで移植されながら育つ。父の死後、彼女の出生の移植の背後に潜むおぞましい真相が明らかになる。「自分とは何か」、「どこまでが人間なのか」という深遠な問いを投げかける作品。淡々とした語り口で、父親の執着や倫理観の崩壊といった心理的恐怖を覚える。
「吸血狩り」祖父母の住む田舎で夏休みを過ごしていた「僕」は、従姉の優ちゃんが全身黒ずくめの男と行動を共にするようになり、優ちゃんは吸血鬼に魅入られたと信じ、彼女を守るため戦いを決意する。従姉を守るという純粋な思いが、凄惨な結末を招くという展開に、少年の無邪気な残酷さを感じた。
「本」小学校の同級生から麗美子のもとへ送られてきた古びた一冊の本。内容は不可解で奇妙な文章だった。この本を読んだ者たちは狂気にとりつかれ、その影響は受け取った者たちの間で連鎖していく。グロテスクな描写が多く、人が狂う過程が不気味さを際立たせている。やや唐突に感じられるところもあるが、それが独特の魅力でもある。

No.1 8点 虫暮部
(2021/02/03 12:01登録)
 表題作は、厳しく見れば「玩具修理者」の焼き直し。読み比べると「玩具修理者」はほぼ骨格だけなんだな~。私は肉を纏った「人獣細工」の方が好き。
 「吸血狩り」。この作者にしてはとてもストレート。
 「本」。言語によるソフトウェアが脳にインストールされちゃうことはよくあるよね。これは決して奇天烈なフィクションではないと思う。

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