怪奇クラブ 別題『三人の詐欺師』 |
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作家 | アーサー・マッケン |
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出版日 | 1970年06月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 4点 | ボナンザ | |
(2023/03/30 21:13登録) ホラーとしては怖くもなんともないが、絶妙な味わいを残す。 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2021/04/05 22:48登録) 本作の原題は「三人の詐欺師」だから、「怪奇クラブ」という訳題は訳者の平井呈一の意図的な意訳みたいなものなんだが、意外に原題「三人の詐欺師」はネタバレに近くて、百物語をするような「怪奇クラブ」というクラブがあるわけでもない。スティーブンスンの「新アラビアンナイト」風の連鎖的奇譚集という体裁の作品なんだが、怪奇か?というとタダの詐欺話みたいな「小さな酒場での出来事」やらスリラー風の「暗黒の谷」もあって、恐怖・怪奇というよりも「奇譚」というやや広いカテゴリで捉えた方がいいのだろう。 それでも有名な「黒い石印」と「白い粉薬」の二大怪奇編は、ラヴクラフトが研究し模倣したのがよくわかる。「描写せずに感じさせる」ラヴクラフトの流儀はマッケンに源があるのだ。でしかも、この話の鎖は最後で一まわりまわって最初の場面につながる。そして、最初の場面の「三人の詐欺師」が何をしようとしていたのかが理解できて、「詐欺師」であるのと同時に理に落ちた詐欺ではない、おぞましい秘密結社の神秘が読者の脳内に具体的な「描写」なしに想像され、この「恐怖の円環」が完成する。 評者ネタバレしちゃったんだけども、これは理に落ちた「オチ」ではないから、ラヴクラフトの「描写せずに想像させて感じさせる」同様に、実際に体験してみないと絶対わからないと思うんだ。大概の読者は最終章を読んだ後に、冒頭を読み直し、登場人物の整理表を作って、もう一度浚いなおすだろう。まさにマッケンの術中にハマっている。このループの魔術が空前絶後だと思う。 創元だと短編「大いなる来復」を収録。こっちは「聖なる」方の神秘の話。ユイスマンスもそうだけど、世紀末悪魔主義者って、悔い改めちゃうのが定石みたいなものなのか。 |