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ミステリの祭典

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犯人に告ぐ2  闇の蜃気楼
巻島史彦

作家 雫井脩介
出版日2015年09月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 パメル
(2024/03/06 19:36登録)
巧妙に仕組まれた誘拐事件に巻島史彦警視が捜査を担当する。振り込め詐欺の手口を応用した誘拐という意表を突いたアイデアで、警察小説でよくある誘拐事件とは肌合いが異なっている。いかに警察の思い込みの裏をかくかという、欺いて犯人側のリスクヘッジをするかというところに注力した犯罪である。前作は犯罪そのものよりも、警察の内紛やマスコミの卑劣さが目立っていたが、本作はその点は抑えられており、メインは間違いなく誘拐犯グループと捜査陣の対決である。
犯行グループのリーダーは、振り込め詐欺の天才的指南役というキャラクター設定で、人間の異常性やスケール感、カリスマ性、ずば抜けた知力などをエキセントリックな性格を味付けし、説得力を持たせている。
大きな特徴は、被害者心理を読んで騙す、さらには思考停止させるという心理捜査手法が徹底的に応用されること。犯行グループは巧みにミスディレクションを張り巡らし、盲点を突いてくる。特にクライマックスで犯人が打ってくる手はシンプルながら巧妙だ。

No.1 7点 E-BANKER
(2021/01/28 22:37登録)
前作となる「犯人に告ぐ」を読了したのが、今を去ること11年半前の2009年9月。満を持して今回続編を手に取ることに(単なる偶然、思い付きですが・・・)
巻島警部は警視に昇進。相変わらずの長髪をなびかせている模様。2015年の発表。

~神奈川県警が劇場型捜査を展開した「バットマン事件」から半年。巻島史彦警視は、誘拐事件の捜査を任された。和菓子メーカーの社長と息子が拉致監禁され、後日社長のみが解放される。社長と協力して捜査態勢を敷く巻島だったが、裏では犯人側の真の計画が進行していた。知恵の回る犯人との緊迫の攻防!~

作品中では前作から僅か半年後の設定になっているけど、実際の刊行は11年後。さすがに忘れてるよなー
でも、前作の設定が割と密に絡んでくる本作。本来は、前作を読み直した方がいいのかもしれない。
で、物語は「オレオレ詐欺グループ」の組織的犯罪を描くところからスタートする。
今回、巻島の好敵手となる謎の男「淡野」と、彼に従う兄弟の3人が手を染めるのはズバリ「誘拐ビジネス」。
そう、「誘拐」という犯罪をビジネスにしてしまおうという実に「ふてぇー」奴らなのだ。

何より、巻島を中心とする神奈川県警と「淡野」を中心とした犯人グループの知恵比べが本作最大の注目点。
お互いが「裏」、「裏の裏」そして「そのまた裏」をかこうとするまさに化かし合い。
この辺りの盛り上げ方はさすがに作者。心得ている。
山下公園⇔横浜公園を舞台とする身代金を受け渡しは両者痛み分けに終わるのだが、そこまでも見越したうえでの淡野の次の一手!
実に劇場的。裏をかかれたはずの巻島を救ったのは、まさかの人物!
いやいや、なかなかの面白さ。予定調和な箇所もあるにはあるけど、十分に満足できるエンタメ作品に仕上がっていると思う。

そして終章。巻島の前にひれ伏すことになった・・・と思いきや。物語は若干の残尿感を残してパート3へ続くことに。
当然読みますよ。記憶が薄れないうちに。
(途中に描かれている県警内の人事の話がリアルっぽくて「へぇー」って思った。どこもそういうことってあるよね)

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