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ミステリの祭典

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消えた目撃者
ペリイ・メイスン

作家 E・S・ガードナー
出版日1976年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 nukkam
(2022/07/11 06:56登録)
(ネタバレなしです) E・S・ガードナー(1889-1970)のペリー・メイスンシリーズは長編が82作も書かれた割には中短編は非常に少ないです。本書は1970年に日本独自編集でシリーズ中編を3作収めた本格派推理小説の中編集で、私は角川文庫版(1976年)を読みましたが1949年に発表されたと紹介されている「消えた目撃者」が弾十六さんのご講評でガードナー作かどうか疑わしいと指摘されているのに驚きました。慧眼の弾十六さんは英語版の原書情報が見つからないだけでなく文体がガードナーらしくないことまで見抜かれておりますが、恥ずかしながら私は全くそんな疑問を抱かず法廷での見事な逆転劇を堪能しました(偽作なら日本で誰かが創作したのでしょうけどなぜでしょう?)。「叫ぶ燕」(1948年)と「緋の接吻」(1948年)はどちらもシリーズ第34作長編の「用心深い浮気女」(1949年)に一緒に収められて本国で単行本化されており、さすがに真作でしょう。前者のメイスンは弁護士というより私立探偵みたいで、法廷場面もないですし殺人犯の正体は警察が突き止めているのが異色ですが、メイスンもしっかり裏でいい仕事しています。後者は事後従犯者による工作が読者にあらかじめ知らされる倒叙風な展開が印象的で、これでどうやって真犯人にたどり着けるのだろうと思わせますが劇的な法廷場面で鮮やかに決着します。「消えた目撃者」が偽作だとしても良作揃いの中編集だと思います。

No.1 6点 弾十六
(2021/01/16 04:37登録)
角川文庫、1976年11月刊行。ペリー・メイスンものの中篇三作の集成。
元は1961年ヒッチコック・マガジンに掲載されたもの。雑誌掲載時に訳者名が邦枝輝夫となっていたが、この文庫では黒田昌一。訳文は同じなので、同一人物である。
他にも翻訳がある「叫ぶ燕」、「緋の接吻」については『怪盗と接吻と女たち』に書評を書いたが、問題は表題作の『消えた目撃者』(本書では原題がThe Case of the Wanted Witness、初出誌「クルー」1949年3月としている。)
この原題も、雑誌名Clueも該当するものが見当たらない。内容もそれっぽく仕上げているが、他二作と比べて文体が全然違う。翻訳もこなれすぎてる感じ。
訳者さんのでっち上げか、ラジオ・シリーズのノヴェライズなのかも。(それにしちゃあ雑誌名に該当がないのが変だが…)
ペリー・メイスン ものの珍作として、興味のある方以外は読む必要はないでしょう。
評価点は他二作も加味したものです。
(以下、2021-1-18追記)
翻訳者の邦枝輝夫は有名な「田中潤司」のことだという。邦枝名義でヒッチコック・マガジンに翻訳多し。レスター・リースものもパルプ雑誌から数篇翻訳している(単行本未収録)。読まなくちゃ!

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