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ミステリの祭典

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手錠はバラの花に―女性刑事・倉原真樹の名推理
倉原真樹シリーズ

作家 日下圭介
出版日1992年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2023/10/11 23:58登録)
(ネタバレなしです) 女性刑事・倉原真樹シリーズの短編作品は他の短編集でもいくつか読むことができますが、全てをシリーズ作品が占めている短編集は1991年から1992年にかけて発表された6作品を収めて1992年に出版された本書が唯一のようです。地味ながら個性を感じさせる作品が多く、「自首した女」(1991年)は自首した女性が本当に犯人なのかを推理するプロットで、安易に別の犯人を捜すのではなくしっかりと自白の内容を検証しています。もっともその分犯人当てとしては物足りませんが。双葉文庫版の「作者の言葉」でこのシリーズを「私なりの警察小説を書き上げる」ことを目標にしているためか時に本格派推理小説の王道路線から外れてしまう作品もあります。それでもやはり自白後の捜査を描いた「指紋」(1991年)は、トリックはE・S・ガードナーの某作品に前例がありますけど本格派の謎解きは充実していると思います。銀行強盗を追跡する異色の「間抜けすぎた電話」(1991年)でもメッセージの謎解き推理を織り込んで本格派の要素をぎりぎり残しています。

No.1 6点 人並由真
(2021/01/17 17:02登録)
(ネタバレなし)
 先行する別の長編でサブキャラだった女性刑事・倉原真樹。彼女を主人公に昇格させた連作短編集。
 文庫の方で読んだが、巻末には山前譲さんによる、文庫版の刊行時点までのシリーズの軌跡を精緻に語った丁寧な解説がついていて有難い。

 平成3~4年の「小説推理」に隔月連載されたシリーズで、全6本のちょっと長めの短編を収録。
 第二話「宙吊りの青春」の不可能犯罪は、昭和のミステリクイズ本に出てきそうな明快なトリックで解明されて、なんか懐かしい雰囲気だった。

 それでも4話あたりまでは軽い謎解きフーダニットの興味もあるが、最後の方は話の幅を広げたくなったのか、あるいは編集部の要請か、逃走中の銀行強盗犯人の隠れ家を突き止めるといったエピソードも出てくる。まあそれでも最低限のパズルっぽい要素は忍ばせてあるが。
 就寝前にもうちょっとミステリを読みたいとき、外出したときの時間待ち用としては重宝した。

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