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ミステリの祭典

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網内人

作家 陳浩基
出版日2020年09月
平均点8.33点
書評数3人

No.3 9点 八二一
(2023/10/19 20:37登録)
ネット専門の名探偵アニエの魅力、最新技術を駆使した調査のディテール、高度情報化社会の闇、そして巧妙な仕掛け。
現代香港を舞台にした最上級ミステリ。

No.2 8点 ROM大臣
(2023/07/07 12:53登録)
ネット上で誹謗中傷にさらされた女子中学生が自殺した。姉のアイは、悪意の主を突き止めて復讐すべく、ネット専門の探偵、アニエに調査を依頼する。
作中にはインターネットに関する専門知識が大量に披露されている。視点人物のアイは、その方面には素人であり、彼女がアニエから専門用語などを教わることで、読者に対する案内の役目も果たすことになる。
凄腕のハッカーであるアニエは、時には非合法的手段で情報を集めるなど、善悪を超越した立場にいるキャラクターであり、その倫理観も独特だ。そういう人物でなければ、匿名性の大海に紛れ込んだ悪意の持ち主には迫れないという透徹した達観が本書の底流にはある。
途中でアイの復讐相手の正体が明かされる。つまり犯人の意外性は放棄されているわけで、本格ミステリとしての興味は期待できないだろうと思っていたが、思いがけないところに仕掛けが用意されていて満足。
情報化時代のミステリとして、香港の特異性に収まりきらない普遍的な面白さにあふれた作品といえる。

No.1 8点 麝香福郎
(2022/11/02 20:56登録)
地下鉄での痴漢の被害者から一転、疑惑の不良少女としてネットで叩かれ追い詰められる。現代の香港が抱える諸問題やネットの危うさを背景に、極めて有能だが癖のあるアニエが進めるハイテク調査の濃密なディテール、妹の復讐劇へと移り行く緊迫した展開、細やかに配された数々の仕掛けの妙、そして並行して描かれるITビジネス小説のごときパートの意味。
本作は、技術革新により人間の「ひと」を見る力が衰えつつある現代で、それでもひとと正しく向き合おうとする意義を問い、いま優れた知識と大きな力を有する者がいかに在るべきかを示す、未来への希望を込めた物語といえよう。

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