英国風の殺人 |
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作家 | シリル・ヘアー |
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出版日 | 1995年01月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | ことは | |
(2022/09/04 23:01登録) 解説に「戯曲が元」というような記述があって、たしかに舞台のようだった。各章、それぞれ1つの場で進行する構成は、舞台を見ている状況を思い描いて読むと、各章がイメージしやすいと思う。そのためか、全体の構成は見通ししやすく、謎やキャラクターの葛藤がすっと入っきて読みやすい。 クリスマス・ストーリーとして構想されていると思われ、雰囲気も良い。雰囲気の良さは翻訳によるものも大きいと思う。(英語がわかるわけでもないし、原書を読んだわけでもない、日本文からだけの感想だけれど)良い翻訳だと思う。 皮肉めいた状況や展開は、いかにも英国風のユーモアだなと感じる。解説で称賛されているのも、その点だと思う。 けれど、ミステリとしては、あまりみどころはないかな。真相として提示される内容も、矛盾のない仮説のひとつ以上に証拠がない。ある部分、意外ではあるが、それだけかな。 キャラクターも魅力があり、英国風のユーモアがある小説としては大いに楽しめるが、ミステリとしての楽しみとはベクトルが違う気がする。 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | |
(2021/07/03 12:01登録) (ネタバレなし) 第二次世界大戦から(おそらく)数年。英国のマークシャー地方で、土地の老貴族ながら病身で老い先短いトーマス・ウォーベック卿がクリスマスパーティーを開催しようとしていた。だがトーマスは病床のため、主賓はトーマスの息子でファシスト集団「自由と正義連盟」のリーダーであるロバートに任された。来賓のなかには、ファシストのロバートに反感を抱いたり距離を置く者も多かったが、やがてそのクリスマスパーティーの場で、ひとりの人物が殺される。 1951年の英国作品。 舞台となる屋敷にいる主要人物がひとケタ。雪に閉ざされた中でのクローズドサークルもの、で、ひとりひとりの描写をほぼ章単位で語ったのちに集合させてから事件が起きるという、トラディショナルな謎解きパズラー。帯付き、月報入りの美本の古書を500円で入手できたのは、安い買い物だった。 大きめの級数の活字でハードカバー240ページほど、翻訳も全体的に読みやすく、いっきに読了してしまった。 話題となっている動機の意外な真相はなるほどね、と思わせるものの、一方で探偵役の推理が思い付きの仮説を述べているだけのような……。そういう意味では、これほどもやもやしたのは久々かもしれない。評者は割とそういうのは気にしない方なんだけどね。まだ裏があるとして、次の多重解決的な推理につなげられそうな気がする。 それでも大ネタ、舞台設定、登場人物と、トータルとしてはそれなりに楽しめた。あ、シリル・ヘアーは初読である。『風が吹く時』は蔵書が見つからない。『法の悲劇』は本が入手できていない(ハズ)。 |
No.1 | 6点 | mini | |
(2012/09/03 09:45登録) ロンドン五輪は閉幕したがパラリンピックが始まった、ロンドンでなく地方都市でだが英国はパラリンピック発祥の地らしい ワールドカップと違い五輪は都市単位開催なので、ロンドンのみと英国全体とは意味が違うが、ここは英国にちなんだ作品を、そのものズバリ「英国風の殺人」だ、読んだのはすげ~前だから忘れてたよ この作品の肝は題名通りのまさに”英国風な動機”なのだ、他の国では通用しない特殊な動機であり当然ながら日本人にも意味を成さない しかしである、だから動機が理解出来ずつまらないかと言うと、全くそんな事は無い 英国独特な制度はちゃんと説明されてるし日本人から見ても理解できるし、他の作では見られない面白い動機だ 舞台設定が純然たる”雪の山荘テーマ”なのが個人的には気に入らないのだが、ヘアーの代表作とまでは言えないものの十分に評価出来る佳作だと思う イネス、ブレイク、クリスピンらの英国教養派は、”教養”という語句とは裏腹に案外と重厚感よりも軽妙洒脱が売りなのだが、その英国教養派の1人ヘアーらしい小粋な作品だ ※ そう言えばNHK公式五輪テーマソングは『風がふいている(いきものがかり)』だけど、シリル・ヘアーにも「風が吹く時」という作品が有るのも何かの縁か |