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ミステリの祭典

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大聖堂は大騒ぎ
ジャーヴァス・フェンシリーズ

作家 エドマンド・クリスピン
出版日2004年05月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点 人並由真
(2025/03/10 18:51登録)
(ネタバレなし)
 すでに世界大戦で多くの被害が出た、1940年代半ばの英国。40代で独身の作曲家ジェフリイ・ヴィントナーは、地方のトルーンブリッジの村に向かう。そこでは大聖堂のオルガン奏者が何者かに襲撃されて重傷を負い、代わりの奏者を求める話があった。一方で同じ村にはジェフリイの大学時代の学友ジャーヴァス・フェン教授が滞在しており、彼からの呼び出しもあった。二つの案件がらみで村に赴いたジェフリイは、そこで奇妙な密室空間での怪事、そして新たな殺人事件に遭遇する。

 1545年の英国作品。『金蠅』に続くジャーヴァス・フェンものの長編第二弾。
 ディクスン・カーの『眠れるスフィンクス』の<密閉された地下霊廟の中で動かされた棺の謎>を想起させる、巨大な石の墓碑が密室的な空間のなかで倒される? 事態。謎の提示としてはすこぶる王道で、面白そうである。

 ただ先に読んだ『金蠅』が<地味そうだけど、意外にそこそこユーモアもあって面白かった>のに比べ、こちらは外連味や好テンポで開幕する導入部で作品への期待値が当初からそれなりに上がってしまう分、全体のストーリーの実際の盛り上がりのなさに、いささかガッカリした(中盤の新たな殺人など、イベント性はあるのだが)。
 あと犯人は意外といえば意外ではあったが、個人的には思う所も多く、あまり素直にミステリとしてサプライズやロジックの妙を楽しめない。
(その事情を書いてしまうとネタバレになるかもしれない~ならないかもしれない~なので、控えるが。)

 個人的には戦時色が物語に相応に影響したのは、良し悪し。こないだ読んだ、ようやく発掘された未訳編『列をなす棺』よりは、トータルでちょっと上かな。まあそんな感じでした。評点は実質、5.5点。

No.2 4点 nukkam
(2016/09/19 02:36登録)
(ネタバレなしです) 1945年発表のフェン教授シリーズ第2作で、豪快な密室トリックに手掛かり索引付きの謎解き、どたばた劇やオカルト要素まで織り込んだ贅沢な本格派推理小説ですが真相には不満を覚えました。ネタバレになるのでその理由を詳しく書けませんが動機に関する真相があれでは何でもアリの謎解きになってしまうと思います。書かれた時代を考慮するとこういうのもアリなのかもしれませんが。物語としてはユーモアも交えていますがどちらかというと悲劇的で救いのない読後感を残します。

No.1 6点 mini
(2010/12/20 10:08登録)
一昨日、18日に創元文庫から「愛は血を流して横たわる」が刊行された
国書刊行会版からの文庫化だが、藤原編集室によると国書版の残り2冊も将来的には文庫化の含みを持たせていた
「愛は血を」と「白鳥の歌」の書評は既に書いたからもう1冊の書評も書いちゃおう

「大聖堂は大騒ぎ」はフェン教授シリーズでは初期の作である
後期作の「愛は血を流して横たわる」がトリックは小粒ながら端正な謎解きなど本格として良く纏まった万人向けの佳作だとすれば、「大聖堂」は派手なプロットと大胆不敵豪快なトリック炸裂に好き嫌いが分かれそうではある
「消えた玩具屋」と並んでファース色が強く、中でも有名なポーの大鴉の詩が絡む場面などは抱腹絶倒で、流石は英国教養派を代表する作家だよね
反面、背景にスパイ諜報活動が絡む面などは、本格にそういう要素が入り込むのを嫌う読者も居そうで、その手の読者にはシリーズの中では評価が下がるだろうな
私は本格派の動機面にスパイ要素が入ってきたって全然平気な読者で、動機に関して個人的な動機じゃ無ければ駄目という見方は視野を狭くすると思う
むしろ元々がドタバタを持ち味とするクリスピンだし、さらに作者比でも特にドタバタ色が強いこの作にはスパイ要素も合っているんじゃないかと思った

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