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ミステリの祭典

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湘南人肉医

作家 大石圭
出版日2003年11月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 虫暮部
(2024/05/02 14:30登録)
 人肉嗜食に関する深い思索が窺われ共感を誘う。残虐描写でなく淡々と描かれる食肉処理が怖くてナイス。
 細かなスパイスも多々ちりばめられていて、“権利” を与えた老人の話は絶妙な不条理さが効いた。顔の皮とか耳とか美味しそうだけど食べないんだ? どう終らせるのか心配だったが、テクニカルな幕引きで良い匙加減。
 “肥満体” との設定には何か狙いがあるのか。目撃者の印象に残るリスクとか機動性の低さとか、作者が主人公に架した(必要性の無い)枷、と言う感じがするけれど……立場が逆転した時に多くの胃を満たせる、と言うバランス感覚?

No.1 6点 メルカトル
(2020/11/24 22:47登録)
湘南で整形外科医として働く小鳥田優児は、神の手と噂されるほどの名医だった。数々の難手術を成功させ、多くの女性を見違えるほどの美人に変貌させていた。しかし、彼は小さな頃から人肉に対して憧れを持っていた。そして、ある日、手術で吸引した女性の臀部の脂肪を自宅に持ち帰り、食べてしまう。それは麻酔が施されていたため、苦く、おいしいものではなかったが、人の肉を食べるという禁を破ったことに対して、優児は強いエクスタシーを感じた…。
『BOOK』データベースより。

エロ多めグロ控えめです。タイトル通り美容整形外科医小鳥田が、あの手この手で女を次々と誘き出し、自宅で車の中で殺害浴室にて解体、食べられる部位は全て食べ、残りは捨てる模様を描いています。料理方法も生やステーキ、焼き肉、ハンバーグなど様々で、女の冷凍した生首をテーブルに乗せ、それを眺めながらもりもり食します。なぜ彼がそのような行為に至ったかという切っ掛けから、過去の回想を含んで詳細に描かれており、その筆致は内容とは反比例し美麗なものとなっていると思います。
所謂サイコホラーと言えますが、小鳥田は人肉という特殊な希求や行為以外はごく普通の人間として扱われています。性格的にも破綻はなく、異常な欲求さえなければ単なる名医なのです。カニバリズムと言うより、女の肉を美味しく食しそれを嚥下することにより女と一体になれるという性的興奮を楽しむのが小鳥田の嗜好です。それは私的には何となく理解できる気もします、そういう自分が少し怖かったりして。

警察の動きがなく容疑者扱いもされない為、いったい話がどう転んでいくのかが掴めず最後までどのような結末を迎えるのかが想像できず、オチも読めません。ですから、最初から最後まで興味を持って読むことができましたし、途中でダレることもなく楽しめました。グロくはありませんが、エロ描写はなかなかのものなので、苦手な方は避けたほうが無難でしょう。ツッコミどころは多め。

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