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ミステリの祭典

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気まぐれスターダスト

作家 星新一
出版日2000年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 虫暮部
(2022/04/23 12:45登録)
 ジュヴナイルは別として、一貫した “時代性の無さ” が、まさに星新一。初出情報が無いのは手抜きだな~と思っていたが、読むうちにどうでもよくなった。中には “えっ、星新一がコレを?” な短編もあって、逆説的に “星新一とは何か” を照らし出しているあたり興味深い。土着的ホラーになりそうなのをサラッとまとめた「珍しい客」が私には印象的だった。
 しかし物凄く面白い作品集と言うわけではまぁない。【星】の【屑】とは言い得て妙。いや、逆かな。最低ラインがコレって凄い、と言うべき?

No.1 6点 人並由真
(2020/09/03 21:21登録)
(ネタバレなし)
 2000年3月25日初版。出版芸術社が21世紀初頭前後に刊行していた、前世代~現代(当時)のミステリ、ファンタジー、SF作家たちの比較的入手しにくい中短編を発掘する叢書「ふしぎ文学館」の一冊。
 本書は1997年に逝去した星新一、その幻の処女作や雑誌に掲載されたまま書籍化の機会のなかった作品、さらに稀覯本として高い古書価がついているジュブナイル中短編集『黒い光』の表題作ほか、なかなか読めない作品ばかりを集成した内容で、星ファンには確実に貴重な一冊。
 一般読者向けの幻の作品を集めた「PART1」と、『黒い光』ほかのジュブナイル編の「PART2」、その二部構成になっている。

 個人的には、少年時代に購入しそこねた秋田書店のジュブナイルSF集『黒い光』(の表題作)が読みたくて購入。
 もともと大昔に『009』とか『8マン』とか『鉄人28号』とかのサンデーコミックス(小学館の「少年サンデーコミックス」ではなく、秋田書店の1960年代からのややこしい名前の新書版コミック叢書のこと)の中に、秋田書店の児童向け書籍販促の折り込みパンフが挟まれており、そこでこの『黒い光』も紹介。
 そのパンフのイラストには、洋館らしき屋内で緊張する少年のアップと、彼を階段の上から見下ろす甲冑の怪人(実写版『ジャイアントロボ』の悪役幹部、ミスター・ゴールドみたいな)風の人物が描かれており、おお、この怪人が「黒い光」か!? とワクワクしたのを何となく覚えている。
 しかし今回、実作を読んでみたら、そんな甲冑の怪人なんかどこにも出てこなかった……(タダの鎧すら登場しない)。一体、何だったのだろう、アレは?

 でもって、その本題の『黒い光』の内容だが、都内周辺で一定範囲の空間から突如光が消えて、突然、完全な闇が発生する怪事件が続発。その闇の中で今まであったはずの物品が消える怪事も起きる。当初は単にイタズラ的な騒ぎだったのだが、次第に高価な宝石までが盗まれる事態に……と話がオオゴトになっていく。
 事件の背景にある科学設定なんかはいかにも昭和のSFジュブナイルという感じで、特に星新一らしさとかは感じない、香山滋だろうと高木彬光だろうと誰が書いてもいいような一作だったが、まあ個人的にはもともとこういうものが嫌いではない、というよりお好みなので、特に作者の名前は勘案せずに楽しんだ。
(ただまぁ、本音を言えば、やっぱこういうジュブナイルって、雑誌連載時か元版書籍にあった挿し絵付きで読みたいのよね。まさに無いものねだりだけど~汗~。)

 それで今回の『気まぐれスターダスト』所収の作品群総体は、執筆された時期の幅も広く、掲載雑誌とかもバラバラなので、出来ははっきり言って玉石混淆。長めの作品の中には、夜中に読んでいて眠くなってくるものまであった(すみません)。

 そんな中で、全編を読んでの個人的なベストは、パート1の最後に並べられた『火星航路』。手塚マンガの『(旧)ライオンブックス』の一編にありそうな、男女の愛を軸にした人間ドラマ宇宙SF。あまりにも重い状況を軽やかに語る、作者の冷えた筆づかいもいい。作中の主人公夫婦の明日に幸あらんことを。

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