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ミステリの祭典

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少女と武者人形
増補版『夢の中へ』

作家 山田正紀
出版日1982年04月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 虫暮部
(2021/09/26 14:10登録)
 “奇妙な味”と呼ぶのも躊躇する、曖昧な輪郭の短編集。と感じるのは“山田正紀作品”だとの先入観も大きいのだろうか。
 しかし、鮮やかな色彩を放つSF作品群とは対照的で物足りなさもあるが、これはこれで作者の持ち味(悪癖?)の一つと認めざるを得ない。ミステリ系作品でしばしば見られる、きちんとまとまり切らない、雰囲気に流されるような結末はこれと同根だと思うのだ。

 『夢の中へ』は、『少女と武者人形』全編に単行本初収録作品を追加してほぼ倍に増量したもの。嬉しいボーナス・トラックである反面、追加分だけで独自に刊行するには弱いと言う冷静なビジネス的判断でもあるんだろうなぁと切ない。

No.1 5点 メルカトル
(2020/08/10 22:19登録)
「武者人形の剣に血が噴きだしてきたとき、人が死ぬ……」母親と弟の事故死。少女のなかで武者人形と葬式がひとつに重なった。そして別荘での父と叔母の情事──思春期の少女の、揺れ動く複雑な心理と夢魔の世界を描く「少女と武者人形」。ネコをかわいがっている家に赤ん坊が生まれると、ネコと赤ん坊で“運”をとりあい、ネコが死ぬ。でもネコの“運”が赤ん坊の“運”に勝ったとしたら──「ネコのいる風景」など、「奇妙な味の小説」十二篇を収めた直木賞候補の連作短篇集。
Amazon内容紹介より。

可もなく不可もなくって感じです。どれも面白くない訳ではないけれど、凄く面白い訳でもない、オチも気が利いていたりオチが無かったり。どこが直木賞候補になったのか私には理解できませんが、その個性のなさやアクの強くないところが評価に繋がったのかも知れません。ホラーっぽかったり、不条理小説だったり、奇妙な味であったり、まあ様々なシチュエーションで色を目先を変えようという努力は買えますかね。

個人的に良かったと思うのは『友達はどこにいる』『猫のいる風景』『ねじおじ』『ホテルでシャワーを』『ラスト・オーダー』辺りです。
これといって群を抜いている作品は見当たりませんが、平均的にまずまずだと思いますね。山田正紀にしては読みやすかったのが救いでしょうか。しかし、単行本(文芸春秋)から文庫化(集英社)されたのは、それなりに売れると見込んでの事でしょうから、全く読む価値がないとは思えません。暇潰し程度には良いのかも。

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