(2020/08/04 21:58登録)
(ネタバレなしです) 1960年発表の金田一耕助シリーズ第19作の本格派推理小説ですが、元々は短編作品でした。非シリーズ短編「ペルシャ猫を抱く女」(1946年)が原型で、それが「肖像画」(1950年)に改訂され、さらに金田一耕助シリーズ短編版の「志那扇の女」(1957年)と何度もリメイクされています。これだけ改訂されたのですからさぞや完成度の高いミステリーかというとどうも微妙(笑)。二重殺人事件の容疑者が70年前に毒殺魔と疑われた女性の血縁者であったというプロットがジョン・ディクスン・カーの某作品を連想させます。もっとも二重殺人事件の犯行手段は毒殺でなく撲殺なので、せっかくの呪われた血筋の設定のインパクトが弱いのですが。金田一は犯人を捕まえるために多門修という助手を雇ったり、あろうことか似合わぬ洋服を着たりと策を弄するのですがあの結果は(犯人はわかるけど)大失敗ではないでしょうか。等々力警部、いくらこれまでの恩義があったにしろこの失態は穏便にすませちゃいかんでしょ。あの動機であの犯行というのも合理性に欠けると思うし、どうにもすっきりできませんでした。
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