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ミステリの祭典

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ジョン・ブラウンの死体
マクドナルド警部

作家 E・C・R・ロラック
出版日1997年02月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 ことは
(2022/05/14 19:04登録)
最近「エラリー・クイーンの事件簿1」を読んだが、その中の「消えた死体」が、そのまま「ジョン・ブラウンの死体」(ジョン・ブラウンという人物が殺される)だったので、思いついて、積読だった本書を読んでみた。
冒頭、盗作の疑いがある作品の話で目を引くが、これはすぐ背景になり、その後はムーア地方で地道に捜査の過程をおっていく。このあたりの読み心地は、クロフツにきわめて似ていて、それでいてクロフツより情景描写に味わいがある。
そして、終盤、盛り上げて締め。と、よく出来た作品だった。
私は好感だけど、捜査の過程をおっていく部分が、人によっては単調と思うかもしれないなぁ。また、会話は常に冷静な感じで、もっといきいきとしていれば、より面白かったと思う。
推理については、心理の推定が説得力があって、実によかった。うん、クラシカルな英国ミステリを読みたいなという人には、文句なしにおすすめできる良作です。

No.2 6点 mini
(2013/03/22 09:51登録)
昨日21日に創元文庫からE・C・R・ロラック「悪魔と警視庁」が刊行された
藤原編集室の企画らしいが、ロラックの最高傑作の1つと予てから噂が有った作である

一般にセイヤーズ、クリスティ、アリンガム、マーシュの4人は英国4大女流作家と総称されるが、E・C・R・ロラックは戦前黄金時代の1930年代から戦後の50年代まで書き続けている点や総作品数の多さ、さらに当時はクリスティと並んでコリンズ社クライムクラブ叢書の看板作家であったという事実から見ても、1人加えて5大女流作家でもいいんじゃないかと思う
えっ?エリザベス・フェラーズも加えて6大だろうって?、いやそれは駄目、フェラーズは総作品数は多いけどデビューが1940年なので、戦前30年代から書いているという条件に当て嵌まらないんだ
加える1人を強いて挙げればグラディス・ミッチェルだな(笑)
フェラーズの方は比較的翻訳には恵まれてきたが、唯一海外古典の翻訳の波から取り残されてきた感が有るのがロラックだった
創元では今後、これも代表作の1つと言われる「鐘楼と蝙蝠(仮称)」の刊行計画が有るそうでやっとロラックも陽の目を見る時が来そうだ
この調子で初期の代表作の1つと言われる「Murder in St.John's Wood」や、これも最高傑作の1つと言われる「Death at Dyke's Coener」も出して欲しいねえ、あとついでに別名義のキャロル・カーナック名義の作も御願いしたい

便乗企画として「ジョン・ブラウンの死体」をいつ書評するか?今でしょ!
「ジョン・ブラウンの死体」は名前しか聞いた事が無かった「ウィーンの殺人」以来まともに読める初めての作だった
クリスティ風の作風だが、人物描写や風景描写に関してはクリスティを上回る
しかし当サイトでkanamoriさんも御指摘されている通りで、ロラック最大の弱点は、探偵役のマクドナルド警部が没個性的で全く魅力に乏しい点である
ポアロやマープル並とは言わないが、せめてもう少し魅力的な探偵役を創造していたなら、ここまで翻訳が無視される事も無かったろうと惜しまれる
と言うのも日本の読者の嗜好を考えるならば、少なくともアリンガムやマーシュよりは日本で人気になったろうと思われるからだ

No.1 6点 kanamori
(2011/11/29 18:46登録)
いかにも英国’30年代の探偵小説といった地味で渋い作品。
瀕死の浮浪者・ジョン・ブラウンが目撃した謎の人物の怪しい行動と、隠棲するミステリ作家の盗作疑惑という、二つのエピソードが提示されるところまでは(そのつながりは、ある程度予想できるものの)惹きつけるものがありました。
難を言えば、やはりなかなか進まない中盤以降の展開と、マクドナルド警部の個性が全く見えず探偵役として魅力を感じなかったところでしょうか。
マクドナルド主任警部シリーズは全部で40作以上あるらしいのですが、他の作品もこういう感じなんだろうか。

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