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ミステリの祭典

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紙の月

作家 角田光代
出版日2012年03月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 take5
(2020/07/12 01:28登録)
三時間半、お風呂で一気読みしました。
個人の抱える悩み、些細なボタンの掛け違い、
それらが必然の破綻に向かって疾走する様に、
筆力を感じます。
買い物欲の考察を聞いた事があるのですが、
女性筆者ならではの緻密な描写です。

No.1 6点 猫サーカス
(2020/06/08 18:15登録)
総額一億円。横領に手を染めた女性銀行員が転落していく姿を通して、お金やモノでは埋められない人間の心底をスリリングに描いている。梅沢梨花は主婦。生活の充実を求めて銀行のパート職に就いた。顧客先の人望も集め、契約社員へ。転落の発端は男子大学生との恋。交際を維持するため得意先の定期預金証書の偽造に手を伸ばす。内部調査が始まると、発覚を恐れてタイへ逃亡。果たして逃げ切れるのか。個人が高額資金を流用した事件は世間を騒がせ、「普通の人」と現実離れした金額との落差が強調される。金銭感覚、理性、罪悪感を失っていく梨花の心理描写はその落差を解き明かすかのようだ。梨花の行方を気遣う友人たちも離婚、夫婦の不仲など問題を抱え、現代人の閉塞感、焦燥感を代弁する。物語が一気に加速する終盤は、「八日目の蝉」など女性の苦悩を捉えてきた著者の筆力が際立っている。

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