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ミステリの祭典

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北氷洋逃避行
別題「北海の惨劇」

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日1952年09月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2024/02/10 23:45登録)
(ネタバレなしです) ベルギー出身でフランスで活躍したジョルジュ・シムノン(1903-1989)といえば長編短編合わせて400作近い作品を残したと言われる多作家で、何といってもメグレ警視シリーズで世界的に有名です。純文学作品も書いており、ミステリーであっても謎解きをそれほど重視していない作品も少なくないようです。1932年発表の初期作品である本書はフランス語の原書版を読まれた空さんのご講評によるとシムノンにしては謎解きがしっかりしている作品と紹介されています。私はメグレ警視シリーズの「運河の秘密」(「メグレと運河の殺人」)(1930年)と一緒に収められている京北書房版(1952年)で読みましたがさすがに古い翻訳で、舞台となる貨客船は「ポラレステルン號」と表記されています。しかしそれでも非常に読み易い作品です。ドイツのハンブルグからノルウエーのキルケネスへ向かう船上で乗客の失踪、殺人、盗難と事件が相次ぎ、観察者役であるベーテルゼン船長の混乱ぶりがよく描けています。探偵役による推理説明は粗さを感じさせるものの、ちょっとしたトリックもあって確かに本格派推理小説だと思います。

No.1 6点
(2020/05/20 22:58登録)
京北書房から1946年に出版された後、1952年にメグレもの『運河の秘密』(『メグレと運河の殺人』)に併録されたことがあるそうですが、今では邦訳が最も入手しにくいシムノン作品のひとつでしょう。当然そんな古書を探す気などなく、読んだのは原書です。
この邦題からしても、また原題(英語なら THE passenger of Polarlys)からしても、その船客を主役とした犯罪小説系かと思っていたのです。しかしこれはメグレもの以上に謎解きミステリ系の作品になっていて、驚かされました。ノルウェーの町々に寄港していく客船兼貨物船ポラリス号で、まず客の一人が失踪、さらに途中から乗り込んできた警察顧問が殺されるという事件で、クローズド・サークルのフーダニットなのです。しかも最後の方には船が嵐に出会うスペクタクル・シーンまで用意されているというシムノンとは思えない展開は、意外に楽しめました。

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